「帝、週末空いてるか?」
今日は両親が出掛けていてまだ帰ってきていない。
その為、汗と白濁を洗い流そうと二人で風呂へ浸かって一息吐いていると、今まで沈黙していた渡部が不意にそう聞いてきた。
週末の予定を聞いてくるのは、別に珍しいことじゃない。だが、いつもはどちらかの家にするかと発展する会話が、今回は違かった。
「たまには二人でどこか行こう」
「は…?」
「普通に遊ぼう」
──…普通に?
俺は狭い浴槽の中で向かい合う渡部を凝視する。
男子高校生として普通に遊ぶのは普通…というか、俺達が異常…というか。
急に普通になんて言うこいつの意図が分からなくて、一瞬頭が回らなかった。
「…普通、って、何だ?」
「…帝がいつもの連中と遊ぶようなことだろ。賭け以外で」
「いや、うん、そうだよな」
やべぇ、マジ俺今間抜けっぽい。
目の前の顔が呆れたように歪んで、つい目を反らしす。
渡部と普通に遊ぶ。
そんなの、楽しいだろうかと、眉間に力が入ってしまう。
渡部はクラスでも騒がず大人しく、表情も滅多に変えないクールな奴だ。出掛けるとしても、一人で図書館やら美術館やら行ってそうなイメージしか浮かばない。
逆に俺は、友人たちと騒ぐのが好きだし、いつも出掛けるのはゲーセンやカラオケや…騒がしい場所ばっかりで。
そんな対照的な俺らが、二人で普通に遊ぶなんて…
「出来るのか…?」
「出来るだろ」
出来たとしても楽しくなさそうだと口許が引きつく俺に反し、渡部はいつもの無表情で“週末行くぞ”と告げた。
…勝手に決定されたようだ。
まぁ、たまには健全に遊ぶのもいいか…、そう考えて俺は頷いたのだった。
「……というか、足、邪魔」
「別にいーじゃん、狭いんだよ」