短編・中編


□きっかけは失恋だった。
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「まぁまぁ、冗談は置いといてー…今日さ、」

「あのっ」

可笑しそうに笑いながら流した先輩が何かを言おうと口を開いた時、俺ではない可愛らしい声が先輩に掛けられる。
ん、と二人してそちらへと顔を向けると俺らの隣の高校の制服を着た女子が恥ずかしそうに顔を伏せて立っていた。
これはまた、分かりやすく、告白。

コンビニで堂々と、なんて勇気あんなーなんて思いながら、俺はそっちから顔を反らす。

「あの、私…一年前から篠澤先輩のことが…好き、です。付き合って下さい!」

「……んー…」

周りの目を気にしないで素直に告げた女子が、思わず羨ましく思う。
俺は、柊に何も気持ちを伝えられなかった。言えていたら、何か変わったか。

そこで思考を止めて小さく息を溢すと、困ったように笑う篠澤先輩と真っ赤になった女子へと顔を向ける。

──…素直に言えるのは羨ましいけど、相手を間違ってんだろ。

「あの、余計な世話かもだけど、先輩は止めといた方が良いっすよ。超最低な遊び人だから、付き合ってもあんたが傷付けられんの必至だし。…あ、俺、品出ししてきまーす」

「えっ!あ、っえ…!?」

俺は言いたい事だけ言って、俺と先輩を見る女子の戸惑いを無視してその場から逃げ出す。

「っふ、あはは…っうん、あのコの言う通りだから、止めといた方が良いよー?」

可笑しそうに声を震えながらやんわりと断る先輩の声が、背後から聞こえた。




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