短編・中編


□ポッキーゲーム
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言われた通りに渡部の私室へ向かうと定位置のベッドへと腰を下ろし、鞄を足元へ置いた。

渡部の部屋に入るのは、これで何度目だろう。
正月に俺の家に来てからは、二週間に一度は遊ぶようになって。よくココへ来る。
何だろう、何でかは分からないが、渡部の部屋の方が落ち着くんだ。

俺の部屋にはあるゲームや漫画がなく、代わりに小説が置いてあって綺麗に片付けられた部屋。
いつ来ても落ち着くこの感じが、堪らなく好きだ。

ポス、とベッドに横になると、床へと手を伸ばしてポッキーを取る。封を開けて一本、口にくわえた所で渡部がコーヒーを持って部屋へ入ってきた。

「…ほら、コーヒー」

「サンキュ、」

渡部は部屋の真ん中に置かれたテーブルにコーヒーを二つ置いて、床へと腰を下ろす。
普通、客の方が床だよな、とか思いながらも、ベッドへ横になったままポッキーを噛み砕く俺。
でも渡部は怒ってないっぽいし、いいや的な。

ていうか。

「…渡部、さ…ポッキー好き?」

「…嫌いじゃない」

──…ぐ。ここは嫌いって言って欲しかった。

賭けをしなくちゃいけないと諦めて小さく息を吐けば、勢いよく起き上がってベッドの上で胡座をかく。
口内に残るポッキーをほろ苦いコーヒーで流し込んでから、再び一本ポッキーを取って渡部を手招いた。
こっそり携帯をカメラ画面にしとくのも忘れず。

一瞬怪訝そうに眉を動かした渡部だが、仕方なくといった感じで俺の隣に腰を下ろした。

「…何、」

「…ポッキーゲーム、しねぇ?」

「…は?」




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