短編・中編
□ポッキーゲーム
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「はい、ポッキーあげる」
金曜日の放課後、いつもの教室。
いつも通り、俺の机を囲むようにいる友人達と話していると、不意ににっこりと楽しげに微笑んだ友人が突然俺にポッキーを差し出してきた。
別に甘いものは嫌いでもない俺はとりあえずポッキーを受け取ると、友人のその表情に嫌な予感を感じて眉を寄せる。
──…今度は何する気だ?
「あ、何その目ー。日曜日、何の日か知らないの?」
「んだよ、雷雨、明後日は11月11日だぞ?」
ニヤニヤと笑う友人に日付を告げられて、その数字にあぁ、と俺は納得して頷いた。
11月11日、ポッキーの日だ。
「…で?」
明後日の日曜がポッキーの日なのは分かったが、俺にポッキーを渡す友人達の意図が分からない。
それを問うように片手でポッキーの箱を軽く振りながら首を傾げたら、友人達が更に笑みを深めた。嫌な予感がする。
「ポッキーゲーム、してきて?」
「もちろん相手は渡部でな!」
「証拠写真、忘れんなよー」
「っはぁ!?」
俺が驚きに声をあげたのも気にせず、「俺は出来るに千円」「出来ないに五百円!」「少なっ」等と早速お金を賭ける友人達。
──…俺はお前らのゲームのコマじゃねぇ。
何度も俺がコマになっている気がして、ちょっと殺気が湧いた。
そして結局。
「先、俺の部屋行ってていいよ」
「…おぅ」
また、俺は渡部の家に来ることになった。
…友人に貰ったポッキーを持って。