短編・中編


□きっかけは失恋でした。
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「ごめん、俺、ホモじゃねぇから」

俺、朝霞 柊(アサカ ヒイラギ)16才は、

「そ、そうです、よね…すみません…」

たった今、一ノ瀬 裕司(イチノセ ユウジ)先輩18才に、フラれました。






「失恋…失恋!失恋したよ失恋!ぶはははっ」

「笑わないでよバカ」

机で突っ伏す俺を爆笑する俺の友人。

人生初めての恋で、人生初めての失恋。
ショックが大きすぎて笑えない…

──そんなこと思ってたらまた涙でてきた…

「ふぇ…一ノ瀬せんぱーい…」

「男が泣くな、馬鹿。つーかさ、友達なら良いって言ってくれたんだろ?それだけでも感謝しろよ」

そう、そうなのだ。一ノ瀬先輩はクールに見えて凄く優しい。
ホモなんて気持悪い、って突き放さないで、友達ならなってやるって言ってくれたのだ。

そんな一ノ瀬先輩が大好きだ。

「そうだよね、俺なんかを友達にしてくれたんだもん…あぁ更に好きになりそう…」

「………ま、頑張れや」

すぐにデレぇと頬を緩ませた俺を呆れたように見てから席に戻る友人。

携帯の電話帳を開き、先程交換してもらった一ノ瀬先輩のアドレスを見つめながら、俺は更に頬を緩ませた。

──今日は、先輩と一緒に帰れるんだ。

先輩とした約束を思い出しながら、まだ来ない放課後に思いを這せた。






「朝霞、」

「!、一ノ瀬先輩っ」

放課後、先輩の教室へ迎えに行こうと鞄に教材を詰めていれば、背後から愛しい人の声が聞こえた。
振り返れば予想通り、一ノ瀬先輩がドアの所へ立っている。俺は慌てて鞄を肩に掛けて先輩の元へ駆け寄り、少しだけ低い所にある目を見つめて微笑んだ。

「わざわざ先輩が来なくても、俺が迎えに行きましたのに」

「一年が三年の教室にってのは来づらいかと思って」

「先輩の為なら、全然大丈夫ですよっ」

にこっと微笑んで素直に言うと、無表情気味の先輩がそうか、と僅かに微笑んでくれた。

──ッ、先輩の笑顔、初めて見た!

「可愛い…」

「っはぁ?意味分かんない、行くよ」

「あっ、はい!」





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