短編・中編
□ゲーム
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耳を触られて体は過剰に反応した。いつもと違う自分の声にカッと顔を熱くした。同時に腰へと響く何かを感じて混乱する。
───…俺、何感じてんの…?!
「っぁ…ちょ、耳…ゃめ…ッ」
「…ここ感じるんだ」
耳たぶを揉むように弄る渡部の指に俺は体を震わせながら耐える。こっちは必死だというのに相手はいつもと変わらず冷静な声で告げる。
それにムカッときて、押さえられていない手でなんとか渡部を剥がそうとする。けれど力の入らない手では渡部はビクともしなかった。
それどころか顔を近付けられて、慌てて強く目を瞑って顔を反らす俺。
「ん、ゃ…あっ…?!」
ぴちゃり、と耳に生暖かく滑った感触。それが渡部の舌だと認識するまで、そう時間はかからなかった。
「ばっ…ふ、何してんだテメェ…!ひ、ッ…」
「ふーん…」
ぎょっとして横目で未だ無表情の顔を睨み付けるも、襲ってくる刺激に俺は体が震えるのを抑えようとする。だが、抑えることが出来る訳もなく、されるがままだった。
暫しの刺激に耐えていれば、間近に聞こえていた水音がスッと消えた。同時に柔らかな感触も消えて。やっと終わった、と微かに歪む視界の中、虚ろにソファの背持たれを安心しながら見つめていれば、再びあらぬ所を触られて体が跳ねた。
「は、…ぅ……ふァ…ッ」
「…ここもか。お前、敏感だな」
「っ、違っ…!…って脱がすな馬鹿!」
胸の飾りを服越しにコリ、と摘まれた為に反応した体を俺は恨む。渡部の言葉にギッと睨んでやるも全く効いていないかのように無表情で言うと、何故か俺の服を脱がし始めた。
まさかとは思うが男に犯されるなんて嫌だ。別に偏見があるわけでもないけど、現状、俺が男役ではなく女役になってしまっている。
───そんなの有り得ない。
俺は脱がされまいと解放された腕を突っぱねて渡部を剥がそうと抵抗する。
「やめろっての…!冗談じゃねぇ、何でこんなこと…!」
「好きだから」
またも冷静に答えられた言葉に俺は動きを止めてきょとんとする。
「…何が…?」
「お前が」
「っは…?」
───え、待てよ。嘘だろ。
俺は思考が停止して硬直する。それでも渡部の手は止まらない。素肌を撫でられる感覚に混乱したのとは別の意味で体を強張らせた。
「ッ…!」
「因みに、恋愛感情でだから。じゃなきゃ男にこんなことできない」
「ぅあ…っ…っン…!」
硬直している間に服は脱がされてしまい、今度は胸の突起を直に摘まれて体を跳ねさせる。渡部は言葉を紡ぎながら、その唇で俺のを塞いだ。