短編・中編
□ゲーム
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。゚*翌日*゚。
「…お邪魔します」
「どうぞ。俺しかいないから、肩の力抜いていいよ」
初めての渡部ん家に緊張気味に言うと家主の渡部からそれを指摘されて、ふっと緊張を解いた。
───親いたらどうしよ、とか余計な心配しちまった。
肩に下げるショルダーバッグにはダチから渡されたお笑いグランプリのDVD。他にも“癒し効果で笑うだろ!”って事で、仔猫子犬百選ってのも渡された。
俺は笑わないに賭けたけど、マジ大丈夫かな、なんて前を歩く渡部の背中を見てふと思った。
『───…どうもありがとうございましたーっ』
「「………」」
DVD鑑賞終了。結局渡部は微笑むことすらなく、終わってしまった。もちろん俺は隣の反応が気になって笑う余裕もない。
静寂した部屋に薄型テレビから洩れる客の笑い声が反響して、画面はDVDのトップメニューへと戻った。
「………渡部、面白かった?」
「…あぁ」
───ぜんっぜん笑ってねーのに?!
質問に頷いた渡部を見て俺は空笑いを浮かべるしかなかった。
動物もダメ、お笑いもダメ。何をしたら渡部は笑うんだよ。
俺は無性にこいつを笑わせたくて意地になっていく。笑わない、に賭けたんだから笑わない方が良い筈なのに。
頭の中で舌打ちすると、俺は隣に座る渡部をソファに押し倒して──…
「こちょこちょこちょーっ」
「………、」
思いきり脇腹を擽ってやった。
「こちょこちょ……こちょ…」
「………何がしたいの」
案の定全く笑わず。呆れたように盛大な溜め息を吐く渡部に憤怒にカァッと顔に熱が集まる。
くそっ……これじゃ俺が恥かくだけじゃ…っ
「ぅわっ…!?」
ドサッと背中に衝撃があり思わず目を瞑る。混乱しながら目を開けば視界が反転していて、俺の目に映るのは天井と無駄に整った渡部の顔だった。
「ちょ、なに…っ、あはは…っ!」
事態を飲み込めずきょとんとしていたが、脇腹を擽られて考えることを止めて笑う。
「…仕返し。俺、やられたら倍返しする質なんだ」
「ふはっ…わ、悪かった、から…許せっ…ひゃはは…っ」
擽りに弱い俺は何とか渡部の手から逃れようともがいた。けれども、意外に渡部の方が力が強いのか、手首を押し付けられて。その上笑って力が出ないせいか抵抗は皆無になった。
───笑い死ぬ…!
なんて思ったころ。
「ひぅ、んっ…!」