企画物

□またいつか
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───卒業式。

今日で、いつも通りの日々は終わり。
先生と別れ、クラスメイトと別れ。それでもまだ、会いに行ける距離にいる俺たち。
あいつを除いて───…


「……俺、明日北海道に行くんだ」

微かなピンクの舞う校門で、幼い頃からの親友に突然告げられた言葉。
一瞬で、周りから聞こえる生徒たちの涙の声が消えた。

「は……マジかよ…」

「残念ながらマジ」

目を見開いた俺を見て、親友は笑った。
俺は先程校長から受け取った卒業証書を強く握り締める。

───喉が、詰まる。

「北海道……軽々遊びに行けねぇじゃん…金、掛りすぎ…っ」

「はは、だね。金掛るわ…」

親友は悲しげに眉を寄せながらも笑っているのに、俺は涙を堪えてしかめっ面をしている。

「………また会おうな、親友よっ」

「……っ」

昔からの合言葉を言って、親友は笑って俺の前から去っていった。



帰り道、誰もいない土手を歩きながら、俺は少しだけ、涙を溢した。

喉が詰まって、痛くて、声が上手く出せない。

言ってやりたいことはたくさんあったのに。
俺もあいつと同じ様に笑って別れたかったのに。

「俺……超ダセ…っ」

頭の中に今までの事が走馬灯のように駆け巡る。
本当に記憶も残らないくらい幼い頃からずっと一緒にいた親友との思い出は、余りにも多すぎて。

たった三年、一緒だったクラスメイトと先生と別れるだけでも寂しいのに。
十五年も一緒だったお前は、学校からだけじゃなく、俺の元からも卒業すんのかよ。

卒業証書がしわくちゃになるほど握り締めながら、俺は涙を拭って空を見上げた。

「ッ……バッキャローー!」


どこの青春ドラマだ、って言われても、気にしない。
凄く、スッキリしたんだ。親友へ、俺の思いが届いた気がして。


また溢れてきた涙を学ランの袖で乱暴に拭うと、俺は小さく呟いた。

「…親友よ…またいつか、───…」



今度は、泣いてじゃなくて、いつも通りに笑って、会おうな。

大好きな、親友よ。



───…‥ E N D


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