SとSの×××

□SとSの日常
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「ありがとうございましたー」

生徒がドアの側で礼をして出ていく。
俺は笑みを消し、軽く溜め息を吐いて机の上にある書類に視線を落とした。
保険室の備品についての書類だ。表にはびっしりと薬品名が書いてあり、目が痛くなってくる。
眼鏡を外して目頭を軽く揉んでいると再び保険室のドアが開いた。

「武井先生、怪我しました」

「………またですか、馬場先生」

保険室の常連、体育教師の馬場雄大がやってきて、面倒だとか思いつつ俺は再び笑みを浮かべた。
雄大は後ろ手にドアを閉めると俺が座る横にある折り畳み椅子に腰掛けた。心の中で溜め息を吐きつつ回転椅子を回し体を雄大へと向ける。

「今度はどこ怪我したのですか?あ、頭ですね。大丈夫ですよ、それ以上馬鹿になってもそんな変わりませんから。放っておきましょう」

「いやいや、そりゃないですよ武井先生」

にっこりと笑みを浮かべ早口で巻くし立てれば苦笑しながら、ここですよ、と左肘を見せてくる雄大。
……そこ、今朝治療した所だろ。

「朝と同じところですが?馬場先生は朝治療した所を昼休みに再び治療するのですか?」

「いや、だって授業でこけちまったんだよ」

突然、雄大は敬語を外す。それで俺は気付いた。また、ドアの鍵を閉めたのだと。
雄大は何故かいつも鍵を閉めて入ってくる。敬語が面倒なのだろうか。
はぁ、と息を吐いて、俺は笑みを消した。

「お前、体育教師のくせに怪我すんじゃねぇよ。俺の手を煩わせるな」

「俺はヤンチャなんだよ、いくつになっても」

「あっそ。まぁ、俺はお前の苦痛の顔が見れて楽しいけどな」

「〜〜っ!!いってぇっ!」

患部にドバーと消毒液を垂らした。かなりしみた様で雄大は顔をしかめて叫ぶ。そして腕を掴んでいた俺の手を振り払うと消毒液でびっしょり濡れた肘に息を吹きかけている。それを見て、俺は口角を吊り上げた。

「ククッ…」

「ひでぇよ、ったく…このSが」

「はっ!俺はSじゃねぇよ、ドSだ」

「普通自分で言うか、いてっ」

呆れたような表情をする雄大を無視して肘に大きめの絆創膏を貼ってやった。叩き付けるように。
案の定、再び顔をしかめて肘を擦る雄大に、俺はくつくつと笑った。
すると不意に俺の頬に雄大の手が延びてきた。またか、と俺は特に身構えることもなく目を閉じる。

「ん……」

唇が触れると俺は侵入してきた雄大の舌を軽く噛んだ。

「っ……」

「っ、んぅ…っ」

それをきっかけに思い切り舌を絡めとられ舌を吸われた。背筋にゾクリと何かが這い、肩が揺れる。
暫くして唇が離れると俺と雄大を銀糸が繋ぎ、ぷつりと途切れた。

「っは…」

「っ……イイ顔…食べていい?ぃてっ」

濡れた唇を手の甲で乱暴に拭いながら、キモいことを言う雄大を蹴り飛ばした。

「誰がネコになるか。俺はタチだ」

「だって朝輝かわい「早く出ていかねぇとてめぇのケツにぶっといバイブ突っ込むぞ」すみませんでした」

とぼとぼと鍵を開けて雄大が廊下に出る。そして顔だけを此方に向けていつものようにニッと無邪気な笑みを浮かべた。次いで俺もにこりと笑みを浮かべる。

「手当てありがとうございました、武井先生」

「もう転ばないでくださいね、馬場先生」

お互いに言葉を交わせば、雄大はドアを閉めて出ていった。
さて、早く購入する備品を書き込まなければ。

俺はボールペンで消毒薬の欄に"50"と書き込んだ。

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