短編・中編


□きっかけは失恋だった。
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「──…そういう訳で、俺と付き合おっか、瑞穂ちゃん」

学校での昼休み。
いつものように食堂で柊とその彼氏、一ノ瀬先輩と一緒に昼飯を食べていると、何処からか現れた篠澤先輩が現れるなり唐突に告げた。

これには俺も驚いて一瞬固まり、柊は盛大に噎せる。唯一、一ノ瀬先輩だけはラーメンに夢中だったが。

──…って、そんなことより。

「…そういう訳ってどういう訳ですか」

「ん?瑞穂ちゃん可愛いし、楽しいし、昨日は告白された所を邪魔されたし、よし付き合おう!って訳」

「マジで意味不明です帰って下さい」

爽やか笑顔で告げられた言葉が本当に意味が分からなかった。何故そんな展開になるんだ。

冷ややかにそう返してメロンパンにかじりつくと先輩が隣の椅子に腰掛けて肩を寄せられる。

すると一気に食堂内がざわめく。流石有名だけあるのか、周りから小声で篠澤先輩の名前が囁かれる。…ついに男にまで手を出したか、と。

「えっ…えっ?…いつの間に篠澤先輩と仲良く…付き合ってたの?!」

「ちっげーよ、バカ!俺はこんなタラシ…っ」

「そう付き合ってたのー。そういう訳だから、柊くんから横取りさせてもらうね」

「えっ?」

「せ、ん、ぱ、い!」

先輩が余計なこと言うせいで、柊が頬を赤くして動揺しまくりだ。挙げ句にコップを倒してテーブルの上を水浸しにしている。
こういう所が可愛くて仕方ないのだが、今は和む余裕はない。

漸くラーメンを食べ終えた一ノ瀬先輩が小さく苦笑を溢して布巾で拭くのを手伝い始めた。
それを見て、柊をこれ以上混乱させない為にも俺は残りのメロンパンを口に押し込み、篠澤先輩の腕を掴んで立ち上がる。

「悪ぃ、柊、また後でな!先輩、柊よろしく!篠澤先輩はちょっと、こっち来て!」

「うわわっ、ご、ごめんなさ…っ!え、あ、瑞穂!」

「いってらっしゃい」

「っと…あれ、愛の逃避行?瑞穂ちゃん」

「違います!」

──…あぁもう、何だよこの状況!




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