駄文

□空に消えた君への想い
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生まれて初めて恋をした。


一目惚れだった。


体が痺れた様に動かなくて…目が離せなかった。


けれどこの恋にハッピーエンドは訪れない。


俺が恋したのは、自分と犬猿の仲である男。


坂田 銀時だからだ。





「総悟の奴…またサボリやがって」真選組の鬼の副長と言われている土方十四郎は、煙草に火を付けながら舌打ちをする。
見回りをしていたのだが、気付けば総悟がいなくなっていたのだ。
(どこほっつき歩いてんだかな)煙草で少し気持ちを静めて、まぁいいかと歩き出す。


ふと、視界の隅に入った銀色に足が止まる。
団子屋の店主が、イスに座り団子を食べる男と話していた。団子の串を加えて話す銀髪はふわりと笑う。(…あんな顔するんだな…)ズキリと走った胸の痛みを誤魔化す様に止まっていた足を進める。
(馬鹿みてぇだな…わかってんのに)自分に向けられることのない笑顔に嫉妬した。
「…くそ…」煙草を地面に落として踏みつける。
坂田銀時…万事屋の主人であり土方とは犬猿の仲だ。
近藤さんの件で刀を斬られた時に、俺はアイツに惹かれていた。けれど自分は男で銀時も男だ。知られれば気持ち悪がられるだけだ。「分かってんのに…」空を仰ぐと雲が太陽を隠していて、そろそろ雨でも降るのだろうて思っていると、ポタリと雨が頬に当たって流れた。「雨か…」ポツポツと降ってくる雨は、まるで今の自分の心だと思う。

隊服が濡れて体にへばり付くが、そんなことどうでも良い。この想いを雨と一緒に流したかった。
(…寒いかも…)今は9月で、雨に濡れると肌寒い。
「…どうでもいいか…」「何が?」聞こえた声に振り向くと、傘を差した銀時が目の前にいた。
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