駄文

□夏の終わる頃に 銀時side
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きっと生きて君に会いに行くから―――


待っていて――。




「…やっと…会いに行ける…」万事屋の主人坂田銀時は、江戸から離れて京の町外れの古びた病院にいた。
―5年前―
土方に別れを告げて、かつての仲間だった高杉晋助の元へ向かった。
桂からの情報で高杉達が殺人ウィルスを開発したらしく、銀時は桂と共に高杉を止めに行った。高杉の陰謀を阻止したのはいいが、銀時は高杉との激戦で意識不明の重体になったのだ。

「もう大丈夫か?」「あぁ…」ベッドから降りて窓から外を見ていた銀時は、顔に傷のある馴染みの医者に笑って返事をする。「ったく…連れてこられた時は臓器もボロボロで生きてるのが不思議だったってのに」煙草に火を付けて医者はやれやれと首を振った。「まぁ俺は死ねないからね…」ベッドに腰かけて銀時は自分の手を見る。「約束したからな…」君は今何をしているのだろう。
どんな想いでいるのだろう。
5年前の約束なんて忘れてしまってはいないのだろうか。
「…怖いのか?」「かもね」医者の言葉にベッドへ体を倒す。「一年かけて体の感覚も取り戻したし…土方に会いに行きてぇ」けれど土方にとって俺は過去なんじゃないのかと不安になる。「会いに行けばいいだろ」医者の言葉に体を起す。「相手がどう思ってもお前は会いたいんなら行けばいい」「…なんか似合わないなぁ」「うるせぇよ、何時までもここにいられたら邪魔だ」銀時が笑うのでヒラヒラと手を振る医者に世話になったと言い残し、いつもの着流しに着替えて病院を後にした。



5年ぶりの歌舞伎町は相変わらず賑やかだ。
(何も変わってないな)身を隠すように、銀時は目的の場所へ向かった。


夜中の屯所は警備が厳しいので慎重に潜り込んだ。
(部屋が変わってないならこっちに…)「っ!!」思わず声が出そうになる。
縁側で寝ている土方の姿に胸が熱い。(無防備すぎるよ土方…)そっと気配を消して土方に近づく。
覗き込んだ寝顔に自然と笑みが零れて、起こさないように縁側へ座り土方の頭を膝に置く。
5年振りの愛しい人は少し痩せた気がする。
(コレって…涙の跡?)頬に残る跡に指を這わせる。
「ん……」身じろぎした土方の髪に指を絡ませながら寝顔を見つめる。
ゆっくりと開いた瞳が自分を写した。「風邪引くよ…土方」優しく言うと、土方の瞳が見開いて揺れる。「銀…と…き?」久しぶりの土方の声に涙が出そうになった。「遅くなってごめんな?」震える土方の手が頬に触れた。(暖かい…)土方の瞳から溢れる涙に胸が締め付けられる。(ずっと待っててくれたんだよな…)「ぎ…とき…」「会いたかった…」名前を呼ばれて、気付くと土方の体を起こして抱きしめていた。
「馬鹿…野郎…っ…遅いんだよ!!」「うん。ごめんな」抱き締めていた土方を体から離して向き合う。「ずっとずっと…土方のことだけ想ってたんだ」会いたくて会いたくて、想いが溢れる。「銀とき…」「あのさ、5年振りに抱いていい?」土方の涙を舐め取りながら言うと、涙が少し止まった。「なんで…そうなる」「だって5年も土方に触れなかったんだよ?」ずっと抱き締めたかった。温もりに触れたくて抑えきれないと土方を見つめる。「っ…」「土方」切羽詰まった声に、「好きに…しろ」と顔をそらしながら言う土方に笑みがこぼれた。
「今日は寝かせないから」5年分の想いを伝えたくて、額にキスを落とすと、止まっていた土方の涙が溢れてきた。
「…馬鹿、銀…」「愛してるよ土方」腕の中にある温もりを確かめる様に今はただ抱き締めた。

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