BSR

□毛利と長曾我部
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(ゆっきーとオクラ仲良し設定。
  佐助(幸村の護衛的な)が見張ってるから個人的な理由で幸村(陰陽師的な)と面会が出来なくて、この間佐助の説教が始まる前に幸村が言いかけてた甘味処の情報が気になって仕方ない毛利様(霊狐)と、それを苦笑いしながら見守るアニキ(半天狗)な感じ。

 一部 就→幸な表現がありますが、ギャグです。
  ていうか、全体的に元ネタ無視してギャグっぽいです。)







里山の木陰に、一人の若者が佇んでいた。
十六、七くらいの年頃の若者だった。小袖に短袴姿で、何故か草鞋も履かず、裸足だ。
細面で鼻筋が通り、少年らしい清々しさを残した顔立ちをしているが、色の薄い目はmきつい光を湛えていた。

微かに眉の辺りを曇らせて、少し前に幸村が入って行った城を見つめている。

「……毛利。たかが甘味処の情報がそんなに欲しいのか?」

不意に声が降ってきて、若者は、はっと顔を上げた。
木の梢に男がしゃがみ込んでおり、にやにやと此方を見下ろしていた。ボロボロの衣と逆立った銀髪、少しだけ焼けている肌に碧い隻眼が光っている。

「長曾我部…」

話しかけるなと言いたげな顔をしている事に気付かない振りをし、長曾我部はするすると木の幹を伝い降りて行き、毛利の隣にふわりと腰を降ろした。

「見てみろ。面白いな、あの屋敷は。まるで悪霊に対する砦だ。それも、海の向こうからやってきた派手な姿の守り神ばっかうろついてやがる」

毛利と呼ばれた若者は、小さく頷いた。
長曾我部が言った通り、あの屋敷は、全く魔物が付け入る隙のない霊的な防壁で守られていた。
正面の門にも裏門にも、恐ろしげな大太刀をかかげた門神の姿が見える。人の目には見えないだろうが、霊狐である毛利には、その青く輝く姿がはっきりと見えていた。

「あいつらだけじゃなく、多くの外神がお前の様な霊狐が忍び込めねぇ様にあの屋敷を守ってる。
  なあ毛利、いくら甘いモンが好きで佐助が時々見逃してくれるからって、あの屋敷に忍び込んで佐助以外に見つかったら終わりだ。止めた方が良いぞ」

毛利は、長曾我部を睨んだ。

「そんな事は、分かっている」

長曾我部が毛利をからかい出す。

「見守るだけか。珍しい狐だな。
  狐は情が濃いから、人に惚れたら人に化けて、すぐに添い遂げようとするモンだが。」
「誰が惚れたと言った戯けが散れ」

毛利がすっと視線を逸らした。完璧に呆れた様子だ。
そんな毛利を見ながら、長曾我部が心の中で呟く。

(霊狐が人に化けても、どこか獣臭い匂いがするモンだが、こいつには殆ど其れが無い。こいつ、心のどっかで人になりたがってんのかも知れねぇなぁ)

風に髪をなびかせて、じっと屋敷を見下ろしている毛利を眺めて、長曾我部は思った。

(人と同じで、霊狐にも色んな奴が居る。こいつは、もともと性が真っ直ぐで優しいのだろう。可哀想に、主に縛られて使い魔として暮らすのは、こう言う奴には辛いんだろう。
  使い魔になりきれない半端さは、辛いだろう。半端と言うのも、性かも知れないが)

長曾我部は、天狗だった。いや、まだ天狗になりかけの状態だから、半天狗と名乗っている。
もとは腕の良い猟師だったが、深山で猟をしている時に天狗に攫われてしまった。幸運な事に、攫った天狗は人を食うために攫う烏天狗では無く、退屈すると人を連れ去って遊ぶ天狗だった。

やがて遊び飽きた天狗は長曾我部をもとの所に返そうとしてくれたが、その頃には長曾我部の方に帰る気が無くなってしまっていた。
親も子もいない独り者だった彼は、天狗に出会ったのも何かの縁と思い、天狗に頼みこみ天狗になる方法を幾つか教えてもらったのだ。

その中で一番気に入ったのが、気に巻きつく蔦の精の夫にしてもらうと言う手だった。
天を翔け、あちら此方の気に蔦の種を広げていく木縄の術を覚えようと、ちょいと浮き上がっては地に落ち、浮き上がっては転げている内に、ある日彼は大失敗をして岩場に落ち、大きな岩の間に挟まってしまった。

未熟な霊力では、もがいても身体を岩から離す事ができず、困り果てていた所に声が降ってきたのだ。

「…助けて欲しいか、そのままで良いか。」

驚いて目を開けると、岩の上に、美しい狐が一匹佇んでいた。

それが毛利との出会いだった。

今は随分霊力が備わって、天狗としての風格も身についてきていた長曾我部だが、心のどこかではまだ人でいた時の思いやら何やらが抜けきらず、自分でも半人前の天狗だと分かっている。
毛利と言う、使い魔にしては人臭い、この不思議な霊狐がどうも哀れでならないのも、心が天狗になりきっていないからなのだろう。
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