CP小説短編 BL

□自虐から…
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「…っ、……はぁ…」


悩ましい吐息と共に漏れる声。
ポタポタと雫が滴る音。


ザエルアポロは、自室のベッドの上で、自らの斬魄刀を抜き放ち、両の手首に刃を滑らせていた。


そこには、既に走った赤い筋。
白い服の上からの為、朱が滲み、そこだけ鮮やかさを放つ。
まるで、真っ赤な薔薇が咲いているよう。


服に吸い込まれない分の血液が服から滴り、ベッドに点々と染みを作る。


「兄さん……兄さん…兄さん……!!」


口にするのは、自分の片割れ、兄であるイールフォルト。


現在、そのイールフォルトは長期任務で虚夜宮にはおらず、寂しさ、虚しさだけが募っている。


イールフォルトが虚夜宮を出てから一ヶ月。
そして、ザエルアポロが自身の手首を切りはじめて、一週間。


待ち続けるのには、我慢の限界。


「兄さん!」


返事が返ってこないことはわかりきっている。
それでも呼ばずにはいられない。


愛しい兄。
人として生きていた時、どんな時でも一緒に居てくれた兄。
破面になってから、たまに馬鹿な行動をしたりするが、それでも憎めない兄。
自身がどんなに酷い言葉を投げつけても、文句も言わず、優しく抱きしめ、許してくれた兄。


そんな兄は、今は居ない。


今は、一人。


「早く…帰って来てよ……」


そう呟いて再び刃を滑らせる。


虚しさから滑らせる刃。
それが体に痕を付け、痛みが脳髄を痺れさせる度に、それから解放される。


「兄、さん……」


そうして斬魄刀を右手に握ったまま、静かに目を伏せ今日も眠りにつく。

 
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