CP小説短編 BL

□朱と黒の出会い
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これは、BLEACH映画、地獄篇よりずっと昔のこと。
朱蓮と黒刀が出会った時のこと。




…………


黒刀は一人、地獄の第三階層の崖の淵に腰掛け、辺りを見回していた。


ミイラ化は、まだ少ししか始まっておらず、右目は綺麗に残っている。
ただし、その美貌が人を引き付けているという事は確かである。


今、黒刀が見ている辺りには、人影は見えない。


いや、黒刀に気付かれないように移動している。


「あいつ、綺麗だよな」

「あぁ。上玉だぜ」

「暇潰しぐらいにゃなるだろうな」

「あぁ、なんせ、ここには娯楽がないからなぁ」


怪しげに笑いながら黒刀に忍び寄る男が二人。
当然、その二人からも、ここに居るのであれば当然生えているであろう赤錆びた鎖が数本伸びている。


その鎖が、歩く度に僅かに音を発てる。




そんな事は露知らず、黒刀は考え事をしていた。


それは、昔のこと。
自分が現世に人として生き、そして犯したこと。
自分がそうなる原因だった事件のこと。
大切な妹のこと。
それからの人生のこと。


今となっては、妹の顔が思い出せない。
声が思い出せない。
名が思い出せない。


……大切な事だけが綺麗に抜けている。
一番大切にしたかった事が。


何度思いだそうとしても、手の平から砂がこぼれ落ちるように落ちていく。
受け止められない。


変わりに残るのは、その時、その瞬間の感覚、憎しみ。
そして、何より自分を縛り付けた地獄への憎悪。


それらを考えていたのがいけなかったのかも知れない。


後ろから接近していた二人に気付かなかった。


「一体どうしたらいいん…、っ!?」


呟くと共に、背後から手が伸び、黒刀の喉に素早く鎖が巻き付けられる。
その後は、凄い力で引き倒された。
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