ShortDream

□とまれ。お前は美しい。[ルパン]
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泣いた。顔がどんなになっても構わない。だって私は悲しいから。悔しいから。

困り果てたバーテンダーのため息が聞こえる。

ごめんなさい。もうここには二度と来ないわ。迷惑かけてごめん。

居なくなって欲しい存在でごめんなさい。

でも止まらないの、涙が、止まらないの。震えが止まらないの。



からんからん


乾いた音。
貴方じゃない。
このドアを開けるのはあなたのはずがない。


「名無しさんちゃん。」


ほら、ね。

話しかけてきた声は私の求める声じゃない。


「よぉマスター。名無しさんちゃん、いつからいるの?」

「かれこれ二時間はこんな感じですね。」

呆れた色を混ぜた返答に私は涙がまた流れる。

あきれてる。馬鹿にしてる。こんなに惨めな私を、もっと惨めにさせないでよ。


「さて、飲み過ぎじゃないかな、名無しさんちゃん。」

少しおどけた様子で話しかけてくるルパンに、顔をあげて視線をむける。

顔から出る物は全部でている。涙も汗も鼻水も涎も。

そんなぐちゃぐちゃな私を見てルパンは苦笑い。

ポケットからハンカチをだして私の顔を拭いながら隣に座る。

「る…ルパン……」

「かわいい顔が台無しだぜ、名無しさんちゃん。マスターも美人な名無しさんちゃんを見たいってさ。」

「そうですね。」

バーテンダーはニコリとしてグラスをふく。
ねぇ、バーテンダーさん。あなたは私が嫌い?早く出て行って欲しいんでしょ?

「る…ぱん。」
「なんだい名無しさんちゃん。」
「ど、どうしてきたの?」
「名無しさんちゃんが泣いてる気がしたから。」

そういって今度は私の肩を抱き寄せる。
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