ShortDream

□闇夜[ルパン、次元]
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「ルパンには闇夜が似合うね。」

名無しさんの言葉にルパンはよんでいた書物から目を離した。

名無しさんはルパンの方は見向きもせずに窓を開け放って縁に肘をかけ夜空を見上げていた。部屋の暖かさとは違って外の空気は冷たい。顔の筋肉が冷たい風にこわばるのか、少し眉間にしわを寄せている。

「……そうかい?俺様よりも次元ちゃんの方が似合うんでねぇの?」

一向にこっちを見ようとしない彼女に投げかける。

「う〜ん……でも次元は似合うっていうか、闇夜にとけちゃう感じかな。似合うんだけど、なんか違うの。」

「へぇ〜。で、なんで俺が似合うの?」

ルパンは少し興味を持つ。名無しさんはにっこり微笑んでやっとルパンに顔だけ向けた。依然として身体は闇夜の方向にむいている。

彼女が振り返った時甘い栗色の髪がふわりとしてルパンは少々みとれた。

「さぁて。どうしてでしょう?」

意地悪そうな笑みを含んだ名無しさんの言葉に頭がクラクラする。

ルパンは立ちあがって名無しさんのそばにより彼女の両肩に手を置いて一緒に窓の外を見る。

「綺麗な、お月さまだ。」

「綺麗なお月さまでしょう?」

今度はルパンを見上げてにっこり笑った。

「こんなに暗い闇夜をやさしく照らすのね、お星様は隠れちゃうの。お星様は勿体ないね。」

ちょっと切なそうな表情をして名無しさんは月を見つめる。

ルパンはもう月など見ていられなかった。名無しさんを見下ろして肩に置いていた手をずらして肘を乗せ、彼女にのしかかる。

「名無しさんちゃん……俺様ってばもしかしてお月さま?」

「さぁ、どうでしょう?」

「いじわるなんだから。」

そう言ったルパンは嬉しそうに口角を挙げて名無しさんの瞳を見る。
彼女の瞳には月が映り込んできて美しい。

「……ねぇ、名無しさんちゃん?」

「ん?」

「あのさ……」



「おい名無しさん、俺はどうなんだ?」


『名無しさんちゃんのこと好きよ』

という言葉を呑み込んで甘い時間に割り込んできた不躾な相棒をこれでもかと言うくらい睨みつけて名無しさんから少し離れる。

「あ、次元」

名無しさんは振り返って次元をみる。次元は睨みつけてくる赤い相棒の視線を気にもせずむしろ飄々として名無しさんとルパンに近付いた。

「こんのぉ〜今超いいかんじだったのによぅ!」

「え?」

「怒るなよルパン。ガキじゃねぇんだから。」

「……どっちがだ」

ちょっとため息をついてからルパンは煙草に火をつけて再び月に目をやった。

「で、名無しさん。俺は何だ?」

次元が少し楽しそうに名無しさんに聞く。名無しさんは満面の笑みを浮かべる。

「さて、何でしょう?」




――また、謎かけね。ざまぁみろってんだ。

ルパンは煙草をくわえながらニシシと笑う。

輝かしい月に黒い雲がかかった。

――次元は、あの雲かな。

月の存在を覆い隠すようにサーっとすばやくかかる雲に顔をしかめた。


名無しさん「闇夜にとけちゃう次元。」

次元「何だそりゃ」

――ああ、そんなこと最初にいってたっけな。

自分の後ろで繰り広げられる謎々大会の言葉に自嘲気味に煙を吐き出す。

「でも実際は溶け込んでない。溶け込んじゃって居なくなっちゃうのは寂しいでしょ?」

「お前が?」

次元がちょっと嬉しそうに言うのがイライラする。

「もちろん私もそうだけど、ルパンも寂しがると思うな。」

「ルパンがねぇ……おい、お前俺が居なくなったら寂しいか?」

「何バカなこと聞いてんの、あたりまえでしょーが」

笑いながら答えてやると次元は気持ち悪いだのと悪態をついたので少しムッとした。

「だからね、次元は闇夜に浮かぶ、雲」

ルパンは名無しさんの言葉に目を見開く。

月を先ほど覆い隠した雲。誰に月を見せないために覆い隠したんだか。なぁ、名無しさん?

この嫉妬の気持ちは名無しさんにはわからないだろうな。

そう思いながらルパンはまた煙を大きく吸い込んだ。

「あのね、お月さまは凄く優しく光ってるのに星は隠れちゃうでしょ?でも隠れないのは雲なんだよ。」

名無しさんの言葉にはっとしてルパンは煙草をポロリとおとしてしまった。

「雲に隠されて、はやく月がみたいなぁとか思ったり、でもまぶしすぎるからやっぱり雲がちょっと欲しいなぁって思ったりするの。」

名無しさんの無邪気な言葉に沈黙する二人の男。

「でもね、私はお月さまに少し雲がかかっているのが素敵だなぁって思うんだ。二つの要素で一つの絶景になるの。」

名無しさんの目が優しく細められた。
名無しさんは次元の腕をとり窓際に一緒に歩み寄り、さらに呆然とするルパンの腕もつかむ。

三人で窓際に立って夜空をみる形となった。


――名無しさんは気づいていたのだろうか。名無しさんに対する想いが溢れてルパンと次元が静かに対立していた事を……。

「まいったな」

と次元が小さくつぶやいてルパンの方をみるとルパンも次元を見ていた。

「なぁ名無しさんちゃん。」

「ん?」

「たまにこうやって三人でお月見しようか?」

「うん。」

名無しさんが満面の笑みを浮かべてルパンにすり寄った。

「俺の意見はきかねぇのか。」

次元が言うと名無しさんは駄目?というようなうるんだ瞳で彼を見上げる。

「いや…もちろんイイケドヨ。」

しどろもどろに言う次元が少し可愛かった。



次元、名無しさん、ルパンの三人で並んでみる夜空はいつもより輝いて見えた。



END

あとがき

毎回毎回ヘンな文章だなぁとか思う。自分の気持ちに素直にかけない悔しさ。

ルパンも次元も名無しさんちゃんに好意を寄せておりライバルになっています。
で、やっぱり不穏な空気が流れちゃうわけです。

その不穏な空気を察知した名無しさんちゃんは二人を仲直りさせようと思ったですね。

ちなみに名無しさんちゃんは二人が何故険悪なのかはわかりません。わからないから、名無しさんちゃんも謎かけするんですね。二人にしか分からない原因。謎かけはかけるひとしか最初はわからないのよぉ…って私は何を言っているんですかね全く。

そろそろ不二子ちゃんを登場させたいと思っています。

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