ShortDream
□風になびく…[五右衛門]
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夜のLA
煌びやかな街は夜になっても騒がしくビカビカ強く光を放つ建物は古風なサムライ、石川五右衛門には眩しすぎた。
LAのルパンのアジトは街の外れにあったため比較的に静かだったが、次元と不二子の口喧嘩に耐えかねて街に繰り出してみたのだが、余計に心が乱される。
「……修行が足りんな」
自嘲気味につぶやいてからため息をつく。このような喧騒でも悟りの境地に行けるようになりたいものだが、まだまだ未熟である。
歩くのと、強い光に疲れて街の中心から離れた所にある寂れた公園のベンチに腰掛けた。
この公園は子供の遊ぶようなところではないと、見渡してすぐにわかる。
空き缶、酒瓶、壁に銃痕、地面に白い粉、黒く酸化した血の匂い。
どこかのチンピラが溜まったり、麻薬取引につかわれているのだろう。
幸い今は五右衛門ただひとりで静まりかえっている。
彼はベンチの上で座禅を組み瞑想をし始めた。
目を閉じると聴覚が研ぎ澄まされ様々な声が聞こえる。
都会の風が五右衛門の黒髪をなびかせた。
夜は気持ちいいものだ。
自分の輪郭と夜の輪郭とが溶け合って自分が消えてしまいそうになる不安にかられる一方で風は自分を撫で輪郭をはっきりさせる。自然と解け合うのを拒もうとする。
自分はその自然に溶けてしまいたいのに、どうすれば受け入れて貰えるのだろうか……
どのくらいだろうか。そうやって自分と自然の狭間に思いをはせていると、女の悲鳴が人間の世界に五右衛門を連れ戻した。
不機嫌になって目を開けると声の主が公園に駆け込んでくる姿が目に入った。
ポニーテールを弾ませて、ずっと走ってきたのだろう息もあがり、額に汗が光っている。右手に紙袋を大切そうに持ち、五右衛門の存在に気づくことなく急いで振り返った。
「はっ、はっ…はぁっ……撒けたのかな……」
彼女がそう行ったときキシュンっと音がして彼女の右足が血を噴きぐらついた。
「ふくっうっ…!!」
彼女はドッと地面にひざをつく。