ShortDream

□ネクタイ[ルパン]
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「さぁて、目当てのお宝頂戴しますかねぇ♪」

ルパンはニンマリ笑いながら気合いを入れるためか、緩んでいたネクタイをキュッとしめた。名無しさんは少し心配そうにヘリコプターの操縦桿を握ったままルパンを見つめた。
いつもなら操縦は次元の仕事だが彼は今日、目的のビルの警備員に扮し五右衛門と共に紛れ込んでいる。

「おぅ、次元、五右衛門、はじめるぜ。計画通り頼んだぞ。」

通信機が仕込まれたネクタイピンに話しかけるルパン。名無しさんのピアスからもルパンの声が聞こえた。

「せっかく整えたのに、またゆるんじゃったんじゃない?」

名無しさんが言うと、ルパンは「えっ」と言って目的のビルから名無しさんに視線を移した。そして名無しさんが自分を見つめていたのだと言うことに気づく。

「俺に見ほれちゃってたの?」

からかいながら、けれど少し嬉しそうに尋ねると名無しさんはルパンから目を背け操縦桿を強く握った。

「別にぃ。なんとなく見てただけだよーぅだ。」
「ん、まぁ!つれないんだからぁ、名無しさんちゃんは!」

ふざけたように名無しさんも笑ってから、ルパンに目線を戻す。

と…ルパンは先ほどとは別物の真剣な目つきでこちらを見ていた。

不思議に光る瞳に名無しさんは吸い込まれそうになるのをこらえ、かろうじて彼の名をつぶやいた。ルパンは強く優しい視線をそらすことなく名無しさんの名を呼び、言葉を続ける。

「…俺様には嘘は通じないんだぜ名無しさん。」

ドキンと心臓が跳ねた。

「名無しさんちゃんは、俺に見とれてたんだよな?」

「……っ」

言葉に詰まって固まる名無しさん。その様子を見たルパンは口元に笑みを浮かべた。その笑顔は本当にカッコよかった。

「俺はこんな風に名無しさんちゃんのこと、いつも見てたんだぜ。名無しさんちゃんに見とれてた。」

「ルパン…」

心臓の音がうるさくて、心臓の振動で操縦桿を握る手が震える。

「ルパン……私…」


そう言い掛けたとき、目的のビルの照明が消えた。計画スタートの合図だ。それでもルパンは名無しさんから目を離さずに、ネクタイピンを外して自分の懐にしまいネクタイを緩めた。

シュルリ

衣のこすれる爽やかな音がしたかと思うとルパンはネクタイを外して名無しさんの片腕に軽くむすんでから、ヘリコプターのドアを開けた。

びゅうびゅうと夜の冷たい風が機内に入り込んできて名無しさんの髪をめちゃくちゃにする。腕に結ばれたネクタイもはためいた。

「名無しさんちゃん、ネクタイ、御守りね。今日も無事仕事が成功しますようにってな!」

「御守りなんかなくたって大丈夫よっ!」

可愛くない返答だったと名無しさんは思ったが言ってしまったのでもう遅い。そんな返答にルパンはまた笑みを浮かべて赤いジャケットをはためかせながら、ビルに向かって飛び降りる体勢になった。

「俺が大丈夫じゃないんだ。心配なんだよ。せめて俺のかわりに守らせてちょうだいよ、名無しさんちゃん。」

「ル…」

ニヤリとこちらを振り返ってから、すぐさまルパンは夜の闇に躍り出た。
赤いジャケットがヘリからどんどん離れてビルに消えていく。

「ずっ、ずるい!」

赤い背中に名無しさんは顔を赤らめながら叫ぶ。当然届くわけもない。

一方的に言われて名無しさんは少しため息をつき、左腕に結ばれたネクタイを見る。

「ルパン……正直にいうと、あなたが大好き。嘘じゃないわ。」

ネクタイにそっと口付けて、名無しさんは次の予定位置に行くために操縦桿を強く握りなおす。

「次の仕事は私がルパンの腕にネクタイ巻いてやるんだから。」


そして、ちゃんと正直に言おう。そのネクタイの意味を。


















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あとがき

はじめて書きましたがお恥ずかしい限りです。
今はこれが精一杯。

おふざけルパンと真剣ルパンのギャップがたまんないです。
 

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