Story.W
□33
1ページ/1ページ
昨日に引き続き、今日も全く仕事にならなかった。
相変わらず続くミスの連発に主任は呆れた顔で見てくるし、最初は心配していた同僚も次第に主任と同じ顔になっていた。
こんなんじゃ駄目だってわかってるのに、わかってるのに…
「自分がこんな乙女だとは思わなかった」
「え?何か言った?」
「いえ、何でもないです」
自分の世界に入り込んで、ここが詰め所だって忘れてたよ。
隣で一緒にカルテ整理している同僚に、きっと変な奴だと認識されてしまっただろう。
昨日と今日で明らかに私を見る周りの目が変わってしまった事に凹みながら、目線を同僚からカルテに戻す。
そして目にした人物の名前に心臓が大きく跳ねた。
名前の上をそっと指先で触れて、同僚に声をかける。
「これ…」
「ん?ああ、それ混ざってたのね。一昨日チャクラ切れで運ばれてきたのよ」
「一昨日?」
「そうだけど…記載漏れでもあった?」
「いえ、大丈夫です」
一昨日運ばれて来たって事は、ナルトの家に行ってた時に呼び出されてた日だよね?
でも今朝、私の家にいたよね?
チャクラ切れなのにもう動けるの?
え?今朝のあれは偽者?夢?
パラパラとカルテをめくりながら目を通せば、昨日のうちに退院したと書かれている。
翌日に回復できるなら、毎回その回復力を発揮して欲しいものだ。
隣から視線を感じて、慌ててカルテを閉じて横によけた。
何でもないようにまた次のカルテを開いて手元を動かす。
「今回はお世話できなくて残念だよね」
突然話し掛けてきた同僚の言いたい事がわからなくて、少し首を傾けて話の説明を促す。
「カカシさんだよ。いつもなら一週間入院してるから話すチャンスあるけど、今回は一泊しただけだったじゃん」
「はあ…」
「何?その気の抜けた返事は。シオリちゃんはカカシさんと食事だけでも行きたいって思わないの?」
もう一緒に食事した事あるんです。今日も行く予定なんです。
なんて言えるはずもなく、「まあ…」と曖昧な返事をする私を信じられないみたいな顔で見てくる同僚。
「はたけさんのどこがいいんですか?」
「んー、上忍だし顔良いしsex上手だし、文句なしにいい男なとこかな」
顔がいいのは認めるけど、sex上手なのは何で知ってるのかなんて聞かなくてもわかってしまう。
来る者拒まずで色んな子に手出してるって噂だしね。
隣でまだ熱く語っている同僚に適当に相槌をうちながら、私は奴のどこを好きなのかを考える。
顔は超イケメンだけど別に好みじゃないんだよね。
じゃあ性格?って奴の性格よくわかんないし、性格が好きなわけでもないようだ。
知り合って間もないし、そんなに喋った事もない。
考えても考えても答えは見つからなくて、私は一つの結論に辿り着いた。
━━やっぱりこの気持ちは勘違いだったみたい。