Story.W
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任務が早く終わって考えたのは家に帰って体を休める事ではなく、如月シオリに会いに行く事だった。
夕食にでも誘って彼女の観察をしようと考えて、木の葉病院へと向かう。
しばらく木の上で待っていると彼女が出てきた。
とりあえず名前を呼んでみた。キョロキョロと見回すが、俺には気付かない。
まあ一般人の彼女に見つけろというのは無理な話で、上だヨって自分の位置を伝える。
すると顔を左右に動かしながら、だんだんと目線を上に上げていく。
俺を見つけたらしい彼女に、見えていないだろうがニッコリ笑いかけてみた。
「誰ですか?」
「覚えてもらえていないのか…参ったネ」
そうは言ったものの忍ではない彼女に、木の上にいる俺が見えるはずない。
スタンと彼女の目の前に降り立つ。
手の届く距離まできたのに、彼女はあんた誰?とでも言いたそうな顔をしている。
しばらく黙って俺を見ていた彼女が、何も言わないまま俺の隣を通りすぎようとした。
彼女に知らない人として処理されたのだと理解して、慌てて彼女の腕を掴む。
もう二度と俺の事を忘れられないようにと、彼女を引き寄せて口布越しに口付けた。
そのまま固まってしまった彼女に俺の意図を伝える。
「これでもう俺の事忘れないネ」
「…貴方、頭おかしいんですか?」
そう言って心底嫌そうな顔をしている彼女を見て、口布の下でクスリと笑った。
俺の周りには居ないタイプの彼女の反応は、見ていて新鮮だ。
「だから貴方は誰なんですか?」
そう聞いてきた彼女の言葉にはあえて答えず、食事に誘ってみる。
返答は予想通りNOだったが、聞こえなかったことにして彼女の腕を引いて歩いていく。
どうにかしようとしている彼女の抵抗なんて、忍である俺には通用しないとわかったのか、途中から大人しくついてきた。