Story.W


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最初に興味を持ったのは、ただ単に俺を知らなかったから。

そりゃこの広い里で俺を知らない一般人がいるのは当たり前だろう。

だが、彼女は病院のスタッフだ。

忍という仕事柄、病院にはよくお世話になっているので正直言うと俺を知らない女の子は居ないと思っていた。

最近入ったばかりの子なのかと検温に来た子に聞いたら、結構前から居るらしい。

本当に自分を知らないのか確かめたくなった。普段なら俺を知らないだけでここまでしないが、なぜか直接会って確認したいと思った。

ナースコールを押して、名指しで部屋に来てもらうように伝える。

部屋に来た彼女を手招きして近くまで来てもらう。

何か用件があるのだろうと怪しむ事なくベッドの隣まで近づいてきた。

ニコニコと笑顔を貼り付けて彼女を見つめる。

先に口を開いたのは彼女だった。


「何で私はここに居るのでしょうか…」

「俺が呼んだからだネ」


そんな当たり前の事実のみを返答した俺を、不機嫌そうな顔で見てくる。

もっと色んな顔を見てみたくなって、名前を呼んでみた。


「…何で名前知ってるんですか?」

「ん〜?秘密」


無言で眉間の皺が深くなって、何考えてんのって顔に書いてあるネ。

他の子なら名前を呼ぶと頬を染めて喜ぶんだけどねえ…彼女はますます不機嫌になっちゃったヨ。


「何で私を呼んだんですか?」

「ん〜?何となくかな?」

俺の返事がお気に召さなかったようで、彼女がそのまま回れ右して出ていこうとしたのを慌てて止めた。

彼女は掴んだ手首に一度視線を向けてから、深い深い溜め息を吐き出した。

俺を思いっきり睨みつけてから、彼女は口を開いた。


「何となくで私を呼んだんですよね?」

「うん」

「用件がないようなので仕事に戻らせて頂きます。手を離して下さい」

「やだ」


またしても俺の返事が彼女のお気に召さなかったようだ。






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