Story.V


□第七話
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カカシと別れたからといって、大きく何かが変わるという事はなかった。

お互い上忍で忙しいから避けるとかしなくても顔を合わせる事はないしって今までだってそんなに頻繁に会ってたわけじゃないから当たり前か。

変わった事と言えば嫌がらせをされなくなったことぐらい。

これは本当に有難かった。

呼び止められて嫌味を言われる度に時間の無駄だなと思ってたんだよね。

とまあ大きな変化はなく、カカシのいない日常にも慣れた今はあれから季節を1つ巡った。

緑だった葉っぱが赤や黄色に色づきだして地面を占領している。

一歩踏み出すたびに音を奏でる葉っぱ達を足裏に感じながら、私は敵忍から逃げている。

脳内では上記のようなポエマーな事を考えているが、目の前の現実は死に直面した危機的状況。

隙を見せればその瞬間、私の命は刈り取られるだろう。

3マンセルでの機密文書の持ち帰りが今回の任務だった。

文書を受け取り里に向けて移動してすぐに敵忍が待ち伏せしていたのだ。

上忍になったばかりが一名と中忍が一名、そして私。

任務を成功させるには私が囮になり、2人に文書を里へ持ち帰らせるしかない。

それを伝えた瞬間、2人は反対の意を口にしたがそうするしかないと理解して顔を歪ませていた。

私を心配してくれた2人の優しさを思い出せば、限界が近い体でもまだ頑張れそうな気がした。


「どんなけ沸いてくるのよ。しつこい男は嫌われるんだからね」


文句を言いながらクナイを交えれば、目の前の男がニヤリと笑った。

それを見た瞬間、嫌な予感がして大きく後ろへ飛び距離をとろうとした。

地面に着地する直前に目の前が真っ白になったと思えば、胸に熱を感じた。

ゆっくりと色を取り戻していく視界と左胸に触れた右手にぬるりとした感触。

色が戻り行く視界で周りを見回すが敵忍の姿も気配もない。

怪しく思いながらも右手へと視線を移せば赤。

熱を感じる左胸から広がる赤は忍服を侵食していく。

ふらふらとする頭で理解できたのは、私に待つのは死であるという事。

今まで自分を囲んでいた敵忍達がどうしていないのかとか考えても頭がふわふわして考えるのが面倒になった。

立っていられなくなった体を横たえてどこまでも青い空を見上げた。

赤と黄色と青を視界に入れて流れていく雲を目で追った。


「あとの二人はちゃんと里に帰れたかな」


口から紡がれた言葉は思っていたよりも小さくて、風が葉を巻き込む音にかき消されてしまった。

目を開けているのに疲れて瞼を閉じれば銀色が広がった。


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