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□雨の日の記憶
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 今日も、また雨か…残るはイタリア戦。世界への切符を手に入れ、ここまで勝ち残ってきた。世界に挑戦するため多くの仲間と、ライバルと俺たちは戦ってきた。

 影山、鬼道…色々な人と関わり、今に至る。仲間たちだって。そいつらの想いを背負ってここにいる。
 
___そんなこと考えもしなかった、ただ前だけ見ていた。そんな時期もあった。


 地面に打ちつける雨が あの日を思い出させる。


「くそっ!なんでだ…」
「そう焦ることないだろ…少し休んだ方がいい」
 サッカーボールが散乱する帝国学園グラウンド。体中に鈍い痛みが走る。雷門との試合を終え、2ヶ月。少しでも早くサッカーができるように、フィールドに立った。無様なもんだ。ボールのコントロールさえろくにできない。自分の力で、って決めたんだ…影山たちとは違う。でも、それでも鬼道はまた前に進んでいる。追いつかなくてはならない。それだけで毎日必死だった。
 突然目の前が真っ暗になる。
「佐久間!佐久間!!」
「げん…だ?」
「よかった…大丈夫か?」
 何が起きたのか分からなかった。
寺門や辺見、洞面たちが俺と源田を取り囲んでいた。
「今日はここまでにしよう。解散だ」
源田が言うと、みんながばらばらと帰っていく。
「…?…俺は…」
「疲れが溜まってたんだろ。お前突然倒れるからびっくりしたんだぞ…!まったく…ロクに休んでないんじゃ…」
「追いつか…ないと…あいつに…」
「佐久間…」
「足りない…まだ…届かない…」



冷たい。頬に雫が落ちる。
雨…灰色の空から
ぽつり、ぽつり。
「まだ…追いつけな…い…」



空にむかって伸ばし空を切った俺の手は源田の両手に捕らえられた。源田の方に目を向けると暗く淀んだ空と同じように辛そうな顔をしていた。

  なんで なんでお前が辛そうな顔してんだ?
なんで どうしてそんな
    
     「…大丈夫だ」


降り始めた冷たい雨の中に、その一言は
  


なんの根拠も 意味もない言葉が
なぜか安心できた。

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