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□煩悩と抑制と煩悩*
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カーテンで仕切られただけの、教会地下の小さな寝床が今日は一杯だ。
床に散らばったままのお菓子の袋、缶ビールに缶酎ハイ。

今夜は、河川敷住民総出でシェルターに集まり、蝋燭の火を囲み散々食べて飲んで、皆騒ぎ疲れて寝ている。

俺はエリートであるからして、こんな状況でも冷静に現場を説明しなければ気が済まない。

いや、正直に言えば眠れないだけなのだが。

村長の大いびき。ニノさんが盛大に寝返りをうつアクロバティックな物音。サイキック兄弟のハモった寝言。

その音に紛れて微かな、でも確かに意志を持った衣擦れの音がした。

暗闇の中を、ほんのかすかに誰かが動く気配。

俺は体をこわばらせ、息をつめて耳を澄ます。

衣擦れの音が、俺の寝床の前で止まり、カーテンが静かに開けられた。

緊張が、高まる。

何、なに、何なんだよ!?

ギュッと目をつぶってカーテンに背を向けた。

「リク、」

「…お前かよ」

よく知った男の声に一瞬気がゆるみかけたが、男はあろうことか、布団の上から俺を抱きしめて囁いた。

「声、出すなよ」
「あぁっ?!」
身を起こしかけたところで、手で口を塞がれ耳元で低く囁かれる。
両手は布団ごとがっちりホールドされて身動きが取れない。
「おっま…」
「だから静かにしろって」

誰のせいだよ。
抗議する間もなくキスされる。
侵入してくる熱い舌。

俺は皆に気付かれやしないかと気が気でない。

「や、めろって星」
長いキスの後にやっとのことで抗議する。
「何で。こういうの、興奮しない?」

するかっちゅうんじゃボケ!
お前と一緒にすんな!

いくら照明を落とした地下室とはいえ、薄いカーテンを通して物音は筒抜けだ。
シスターやラストサムライに気付かれたら…と思うと冷や汗が流れる。

「お前…今シスターとかラストサムライにバレねぇか心配しただろ」
「…何で」
いや、図星だけどさ。
質問返しの俺を、星は一瞥し面倒くさそうに一言つぶやいた。
「うっぜ」
はぁ!?

「せいぜいアイツらにケツ掘られないように気ぃ付けんだな」

…うぜぇのはどっちだ。
お前以外に男のケツ掘ろうなんてヤツ、そうそう居るかよ。

俺の言いたいことを汲み取ったのか、星が無言で俺の首にかぶりつく。
「…っ!!」
普通に痛い。
鼻先数センチの相手を涙目でにらむ。
「気ぃ付けろって言ってんだよ」
乱暴な言葉とは裏腹に、星はパジャマごしにそっと俺の下腹部に触れた。
シルクのパジャマが星の指先の動きをなめらかに伝え、思わず声を上げそうになり、すんでのところで噛み殺す。

「いい?」
真の闇に近い室内だが、星がニヤリと笑うのが見えるようで腹が立つ。

抗議しようと身じろぎした瞬間、スルリと胸元に左手を入れられ、乳首を爪先でくすぐられた。下腹部にズクリとした感覚が走る。思わず両腿をキュッと擦り寄せると、下腹部をまさぐっていた星の右手を強く引き寄せるようになってしまい、星が「エッチ」と呟いた。

おい、コラ待て。
誰がエッチだ。
こんなの耐えられる訳が無いだろ。

ガッチリ体をホールドして防御する俺にも構わず、星は俺を後ろ抱きにして、左手で乳首を、右手でペニスを刺激する。
ギターか俺は!というツッコミを入れたい。

いやいや、それより。

ギュッと目をつぶって歯を食いしばり、駆けあがる快感を必死でやり過ごそうとするが、緩く立ち上がった先端を爪先で割られ、透明な液が溢れてしまった。思わず高い喘ぎが出てしまいそうになり、ぐっと唇を噛む。

下半身がぐらぐらと崖下に落ちてしまいそうな感覚だ。

星は構わずに溢れた液をすくい、長い指で俺の中にチュプチュプと侵入を始める。

おいおいおい!!
大丈夫かよ、その音?!

始めは浅く、穴の周囲を指先でぬるぬると刺激しながら、徐々に深く、緩急をつけて侵入を繰り返す。
容赦のない愛撫に、全身を強い快感が走り抜けた。
「も…ム、リだっ…て」

皆の吐息が聞こえる中でコトに及んでいる自分が本当に信じられない。

ばれたらどうするんだ、という焦りに、正直いつもより敏感になってしまっている。

俺の背中にぴったりと押しつけられた星の下腹部も固く立ち上がっている。
雄の気配にドクンと心臓が波打つ。

…まさか本当にここで最後までヤるつもりじゃないだろうな。

ヒクヒクと星の指先をくわえ込んだまま、既によくまわらなくなっている思考で考える。

まずいと思う反面、もっと確かな質量と刺激を求めて、星の指を包む内壁はキュッと収縮する。

やばい、なにか違うことを考えなくては。

そうだ、下着。
何て言い訳すればいいんだよ。トランクスにはすでに溢れだした精液が染みてしまっている。

あとアレだ。
布団を汚さないか心配だ。

「…持って帰ればいいから」
耳に唇をつけるようにして星がぼそりと呟く。

何でもお見通しかよ。

…にしたって何て言うの?お漏らししました?ジュースこぼした??
どちらにしろエリートの名を欲しいままにするこの俺には不名誉この上な…

ドスッ!!!

突然、ニノさんのものと思われる、ひときわ大きな物音(寝返りの)がして、俺は一瞬にして現実に引き戻された。


その瞬間、固くそそり立った星のものが一気に最奥まで侵入する。
「!!…っ」

よくも、声をあげなかったものだと自分をほめてあげたい。
求めていた刺激とはいえ、あまりの質量に歯を食いしばった。
息をするのが怖い。
口を開いたが最後、あられもない声が出てしまいそうだ。

うつむいて、ただひたすら耐える。

「悪ぃ。痛かったか?

…息しろよ」

そんな、出来るわけないだろ!
何でお前はこんな時でも余裕なんだよ。

一応俺を気遣っているのか、一度萎えた俺の中心部をゆるゆると刺激しながら、星が緩やかに腰を動かし始める。
水音がするかしないかのギリギリの速度だ。

ヤバい、今度こそ死ぬ。

前立腺を固く尖った部分で直に刺激され、おまけに中心部どころか、ツンと立った胸の先端までをも指先でクリクリと優しくつままれ始める。

三点を同時に責められ、身もだえするような快感が走った。

「息、吐いてみろよ。
大丈夫だから」

な・に・が、大丈夫だよ!!

んじゃあ吐くぞ、俺は知らないからな。

もう半ばやけくそになり、止めていた息を吐き出す。

「…っ、ふ」

あ、やべ。

だが、一度呼吸を始めたら再び止めるのは困難で、喘ぎに似た吐息を漏らしてしまう。

「…っ、はぁ…っ!」

星は満足そうに鼻で笑うだけだ。

こんなの無理だろ。
絶対バレる。

特にシスターなんか戦場で鍛えた鋭すぎる聴覚でなにかを聞きとってしまうかもだし、ラストサムライは薄紙一枚切り分けるあの研ぎ澄まされた感覚でこの微妙な振動を感じてしまうかもしれない。

悪いことをしている、という背徳感と、それを押し流そうとする快感。

知らず、涙がこぼれる。こんな葛藤を、与える相手を思い切り睨む。

「エロい顔。」
眉間に皺を寄せながら、星が一息で呟いた。
ドクリと星のモノが脈打ち、敏感な膨らみを強く刺激した。
宙へ放り出されるような浮遊感がすると同時に、最奥に星の精子が大量に叩きこまれる。
結合部から溢れた精液がトロリと股の間をつたった。

…こいつ、マジで最後までしやがった…

まだヒクヒクと痙攣している俺の中心部を星が丁寧に舐める。

まるで誰かに見せつけるように。

やめろ、バカ。

言いたくてまだ震える手を伸ばしたが、いつの間にか意識を手放していた。

再び目を覚ますと、もうすっかり日は昇って、村人たちは解散した後だった。

着崩れた衣服は正されていたものの、脇に固められたシーツがなんとも怪しい。

一人薄暗い地下シェルターで帰り支度をしていると、扉口に星形のシルエットの男が立った。

「おっま…!
ってそれ何?!」

クレーターのごとく目の上と頬をボコリとくぼませた星が、ニヤリと笑って近寄ってきた。

さては、公共の場で(しかもニノさんが居る空間で…うわ。どう考えても最低すぎる)コトに及んだのがバレたか。

のけぞる俺に、
「まぁコレで公認つーことで」
とほざき、俺の前髪を掻き上げて、おでこ触れるだけのキスをした。



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と言いますかわたくしの煩悩。


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