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□中指*
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すっかり肌寒くなった橋の下。
トレーラーの小さなベッドで身を寄せ合うようにして横になっていると、リクがくしゃみをした。

「大丈夫かよ」
跳ね飛ばされて枕の横でぐしゃぐしゃになっていた毛布を掛けてやる。
情事の後そのままに、二人とも何もつけていない。
真っ裸だ。そら寒いわ。

「なんたって俺様は天才だからな、風邪くらいひくさ…」
この前ラクダ肌着着て、絶対風邪引かねーとか言ってなかった?
つぅか、寝起きだっていうのに早速この言い草。

「可愛くね―奴」

言うと、怒ったのか、俺に背を向けるようにして寝返りを打った。
本当にこいつは。

「おーい、リクたん。
なに怒ってんのよ。」

あー、なにこの感じ。
可愛い女の子相手ならいざ知らず。
俺のちょっとした発言にもすねたりへそ曲げたりする、この王子様。

「可愛くなんて、あるわけないだろ…」
背を向けたままぼそりとリクがつぶやく。

あら、気にしてたのね。
ニヤリと口角を上げ、背を向けたリクを後ろから抱きしめる。

そら俺に比べりゃ細いけど、全然男の体。
いつもより腕に力をこめてみる。
こいつに何か伝わるかな?

「痛ぇーよバカ星」
「…マジで可愛く無ぇ奴だなテメーは」

俺は腕をゆるめ、左手はリクの胸元に、右手をわき腹にそっと当てる。
「俺に優しくして欲しい…?」
「うっぜ…。

ん…
あっ。ん」
「女みたいな喘ぎかたすんなよ」
「…っるせ。あ…っ」
わき腹にそっと這わせた指先を、星は下の薄い茂みにまで降ろす。
ぞくりと快感が走った。

…もっと触って欲しいだなんて、
口が裂けても言えない。

知らず、背筋がしなる。
首をのけ反らせると、すぐ後ろにマスクを外したあいつの顔があった。
男っぽい、しっかりした顎と通った鼻筋。
寄せられた眉に思わず見とれる。
目が合うとすかさず唇を重ねられた。
咥内で絡め合う舌が余裕なく俺を追い詰める。
口の端から飲みきれなかった唾液が漏れ、
顎をつたった。
「はっ…」
互いの唇をむさぼったまま、相変わらず星の左手は俺の乳首をこね回している。
右手はとっくに茂みをかき分けて俺を捕まえ、緩急をつけながら俺をしごく。
小さなトレーラーに自分の体から生み出される、生々しい水音と吐息が反響する。
背徳感と、それを押し流そうとする快感。

まだ夜は明けていないと言っても神出鬼没な橋の下の住民達のことだ。
油断は出来ないのに。

思わず大きく喘ぎそうになって、慌てて口を塞ぐ。

星がニヤリと口角を上げ、「声、出しちまえよ」
「な…に、言って…んっ。は…あっ、そ村長やシスターにバレたら、どうす…」
俺が村長やシスターのことを口にすると、星は不機嫌そうに眉をひそめた。
「ばらしちまえよ。」
こいつは気づかないのだろうか、あいつらがお前を見る目がどんなか。
俺が見てなきゃそのうちヤラれんぞ。
「…なに?」
「何でもねぇよ」
イライラする。
俺以外、誰にも触らせんなよ。
思わず口走りそうになった言葉を飲み込む。
かわりに、胸の突起をなおさら強くつまんでぐいっと左にひねる。
「んっ、あぁっ」
星がいきなり強い刺激を与えたせいで、先走りがシーツを濡らした。
「んだよ、いきなり」
涙目で星を睨むと、星は満足そうに唇の端を持ち上げた。
「気持ちいい?」
「…う、るせ」
「そんな顔、あいつらに見せんじゃねーぞ」
有無をいわさない口調でそう言われ、
後ろの穴に中指を突き立てられる。
散々ほぐされたソコは、待っていたかのように星の骨ばった長い指を飲み込む。
思わず顔を赤くした俺を、星が見透かしたかのように
「なぁリク、気持ちいい?」言葉で責める。
指を一本から二本に増やし、前立腺の周りをかすめて撫でる。
「…っ、知んねぇよ」
言葉とは裏腹に、腰が揺れてしまう。
欲しい。
挿れて欲しい。
指じゃ足りない。
ひっきりなしに漏れる自分の喘ぎ声。
これじゃ、星にねだっているも同然だ。

「…ったく体は素直なのにねぇ」
諦めたのか、星が片肘をつき、乱れてぐちゃぐちゃになった俺をぐっと引き寄せる。
再び、星に後ろ抱きにピッタリと抱きしめられると硬く立ち上がった星が分かった。
リクからの言葉はあきらめたのか、星はそのままゆっくりとリクの中に腰をすすめる。
まだ挿入に慣れないリクを気遣ってか、左手と右手の愛撫は優しく続けたままだ。
女性にする時もこんな風にしてきたのだろうか。
胸が少し痛くなり、思わず星の腕を掴む。
「バック、嫌?」
馬鹿、そうじゃねぇよ。
言いたかったが、思ったより余裕の無い星の吐息に煽られ、リクは首を振った。

愛撫を続ける星の両手を、上から掴んだリクはまるで自慰をしているようだ。
登りつめる快感に集中しているのか、寄せられた眉。
自分より一回り小さい肩が、腕の中でビクりと揺れる。
自身の硬度が増すのを感じた。

リクは星の圧倒的な質量を感じながらも、時間を掛けて解された穴は後少しで全てを受け入れようとしている。
絶え間ない星の愛撫に、下も上もドロドロだ。
ちょっとの刺激でもイきそうになる。

慎重に全てをリクの中に収めると、星はもう一度強くリクを抱きしめた。

「リク、好きだ」
低く耳元で囁かれ、
不意に涙がこぼれそうになる。

「俺も、お前が好きだ」
言って、やっぱり涙がこぼれた。
頬を伝う雫を、星が優しく舐めとる。
すべらかなリクの腕の下に手を回し、抱きしめて手を握った。

ゆっくりと星が腰を動かしはじめる。
「んっ、あっ…っ」
何度も前立腺を擦られ、喘ぐ声がかすれる。
星が奥を貫く度にパシッともぐちゅっともつかない音が響く。
「あ…んぁっ」
二人をつなぐ穴からは白い雫と糸がトロトロとこぼれる。

…頭が真っ白になる。
お互いの汗と精液でぐちゃぐちゃな体を貪りあった末に、俺は初めて後ろだけでイった。

一瞬遅れて俺の中に盛大に精液を流し込んだ男が、ぐったりと呟く。

「愛してる」

使い古された、陳腐な言葉なのに。

こんな言葉だけで、生きていける、なんて思ったり。

肩書きも、これまでの輝かしい経歴も無視した橋の下の世界で、
ただの一人の人間として。



――――
2ラウンド目にしては元気な二人でした。


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