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□お星様だけが知ってる*
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なんでこんなことになってしまったのか…

床に散らばった衣服、乱れたシーツ、というか何よりかたわらで眠る荒川の天体、星。

ふと自分の体を見下ろすと、あちこちに赤やら青やらの痣ができている。
こんなの高井に見られたら号泣もんだな。

なんとなく可笑しくなって口の端を上げると、いつから見ていたのか星の真っ直ぐな瞳と目があった。

「何笑ってんだよ…」

不機嫌そうに眉根を寄せて呟くと、ぐいっと手首をつかまれ星の体の下に抑えこまれた。
途端に昨夜のことが思い出されてビクりと身をすくませる。
一瞬星の表情が悲しげに歪んだ気がしたが、考える間もなく深いキスを落とされる。
「う…はっ、あ…」
慣れない、というより一足飛びに与えられた快楽に体がついていかない。

訳が分からなくて涙がこぼれる。
情けない。
恥ずかしい。
当てつけのように丁寧に、執拗に落とされるキス。
拒否しようにも体はガッチリと押さえこまれている。
俺よりも一回り太い腕、厚い胸板、自分は何一つ他人に劣るところなど無いと思ってきたのに何だこのざまは。
ちょっと面白いくらいやられっぱなしじゃないか。
長いキスから解放され、ぜぇぜぇと息をする。

息つくまもなく星の唇が首筋から鎖骨、胸へと降りていく。
柔らかい星の唇、生々しい感覚。
「いやだ、やめろ、気持ち悪い…」
散々昨日繰り返した言葉を呟く。
「それしか言えねぇのかよ」
耳元で響く、星の低い声。
俺の可愛い彼女のニノさんとは似ても似つかぬ声。
なのに、星に名前を呼ばれただけで、こんなにも心臓が駆ける。

もっと名前を呼んで欲しい。

でもこんな欲望には耐えられない。

星に押さえこまれている間中、俺の脳裏にはニノさんのきれいな瞳が浮かんで離れなかった。
彼女は責めるでもなく、ただ真っ直ぐにこちらを見つめている。

胸が、痛い。

ニノさんの孤独と寂しさを、埋めてあげる何者かに自分がなり得るかもなんて、少しでも思った自分の傲慢。

星の与える絶え間ない愛撫の切れ切れに、
ニノさんの顔が浮かんでは消える。

「…っは、あっ」
「リク…お前いまニノのこと考えてんだろ」
星の熱い舌が胸の突起を甘く噛みながら呟く。
「だっ…たら、何だよ」
舌の先で転がされる度に、下半身に甘い痺れが走り、びくりと体が跳ね上がる。
すでに自身のモノからは透明な先走りが雫を垂らしている。
なんとか星を引き離そうと、赤茶色に染まった頭に伸ばした手にはまるで力が入らない。
「…お前じゃニノを支えてやれねぇよ」
「…っ、な、に言って…」
「だってテメェは…」

チキンだから?童貞だから?
とにかく語尾は聞き取れなかった。

間もなく与えられる、
強い快楽の波に押し流されて俺は意識を手放す。

遠ざかる意識のなかで、星が再びなにかつぶやいた気がしたが、
答えは夜空の彼方。

遠い銀河を旅する夢を見た。


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