JE JOUE
□空へ…
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「つっっ……かまえたっ!!」
「きゃぁっ」
後ろから抱き締められるように捕まえられて、二人で地面に倒れこんだ。
「もう、逃げられんよ…」
「いったたた……もぅ、りょーまさん、痛い……」
龍馬さんの下で身体の向きを変えて目を開けると、思ったより近くに龍馬さんの顔があって、私の心臓は走っていたときよりも激しく動き出した。
「…相変わらず、走るのが早いのう…」
私の心臓はこんなに動いてるのに、龍馬さんはいつものように笑いながらそう言う。
それすら恥ずかしくて、私は龍馬さんの顔から視線を外して横を向く。
「……龍馬さん、あ、あの…ちょっと…どいて……」
ともかくこの体勢をどうにかしたかったのに…
「……なんでじゃ!?」
驚いたことに、龍馬さんはそう言うと、私を抱き締めながら、ごろんと転がり、仰向けになる。
「わ、わぁ!な、何するんですか、龍馬さんんんっ!」
そのまま、龍馬さんの上でぎゅうっと抱き締められ、私は軽くパニックになって顔の真下にある胸を押してみたりするけど、龍馬さんの腕からは抜けられそうもない。
「にししっ」
龍馬さんはそれでも笑うばかり。
しばらくして腕が少しゆるんで、片方の手で私の頭をゆっくり撫でながら言う。
「…小娘……今日はまっことえい天気ちや!吸い込まれそうな空じゃ…」
「え?」
胸の上で顔を少しだけ動かして、空を見てみた。
「わあっ!」
目に飛び込む、雲一つ無い、空の青。
もっと良く見たくて、身体を起こそうとするけど、私を抱き締める龍馬さんの片腕は、解けない。
「…ふふっ……」
私は呆れて笑い、仕方なく身体ごと向きを替える。
龍馬さんの上に寝転ぶような、かなり恥ずかしい格好だけど……
私は身体中で龍馬さんの鼓動を感じながら真っ青な空を見上げる。
「……きれいな空ですね…」
「あぁ…」
私の上で二人の手が重なり合う。
私には、龍馬さんの音しか聞こえなくて、龍馬さんの温もりだけ感じる。
しばらく続く、幸せな沈黙
……どうしよう
龍馬さんが暖かくって、気持ち良くって…
だんだんと意識が空へ溶けていく
空を見ながら、呟く。
「……なぁ、小娘。わしはな…次の仕事が終わったら…………ん?小娘?」
声を掛けても返事はなく、聞こえてくるのは、静かな寝息。
「………ね、寝てしもうたんか……はははっ…」
一人で笑う。
「ま、えいか。暫らくはこのままでな…」
わしの手から力なく滑り落ちた華奢な手を、拾い上げてきゅっと握りしめ、空を仰いだ。
end
空へ By LF