JE JOUE

□すれ違い
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「小娘ー?」
おかしいのう、もう帰っちょってもえい時間なんじゃけんど……部屋におらん…


「りょーまさーん?りょーまさぁん?帰りましたよー?」
あれ?部屋にもいない
龍馬さん、どっかいっちゃったのかな……?


台所か、庭か…それとも…二人でうろうろ。
寺田屋内ですれ違い。


おらんっ、どこにもおらん!

あっれー?おかしいなぁ…どこにもいない…


すれ違い、すれ違い。


「小娘はまだ帰って来ちょらんのか!?中岡!武市!以蔵!おまんらぁ、隠しちょらんか!」

いきなり押し掛け、言いがかりをつける。

「なっ…隠す訳無いだろう!人聞きの悪い!」

「…先生、まともに相手しなくていいです、こんな馬鹿」

「馬鹿とはなんじゃ!馬鹿とは!」


慎太郎、呆れて溜息を吐き、一人こっそり部屋を出る。

うろうろしている小娘と遭遇。


「あっ姉さん!おかえりなさい!帰ってたんスね!」

「あ、慎ちゃん。ただいま!龍馬さんは?どこにもいないみたいなんだけど」

「あぁ…あっちの部屋っス。ちょっと…取り込み中みたいっスけど…」

「取り込み中?お客様?」

「いえ、そういう事では……。とにかく行ってみてくださいッス。後は任せました!」

にっこり笑って去っていく。

「任せた……って、何を…」

そして、あっちの部屋

「りょーまさーん?戻りましたよ…………って」

3人で取っ組み合いのケンカ。

「何やってるんですか、こんな時間に!」

動きを止め、勢い良く、聞こえた大声の方に顔を向ける3人。

間が空いて、離れる3人。

「……お着物、乱れてます」

そう言って襖をしめて部屋を出ていく。

「まっ、待てっ、待て小娘!」

追い掛ける。

「小娘っ、わしなぁ、わし、おんしを捜しよってな、どこにもおらんきに、ちょびっと…その…八つ当たりをな……」

「…また龍馬さんから、噛み付いたんですか…」

歩きながら横目で、頭を掻いてる龍馬を見る。

「……怒っちゅうか…?」

龍馬が呟くと、溜息を吐いて立ち止まる。

「怒ってないですよ?」

「ほ、ほうか…」

「…呆れてるだけです」

にっこり笑う小娘に、苦笑いを浮かべる龍馬。

「…ダメですよ、私がいないからって皆にあたっちゃー」

小娘はクスクス笑いながら龍馬の手を取り、歩き出す。

驚く龍馬は、おう、とだけ言うと、珍しく小娘から繋がれた手を、ぎゅっと握って並んで歩きだす。

「てゆうか、私達、寺田屋の中ですれ違いって、笑えますねー」

「そうじゃの」

笑いあう二人
つないだ手を大きくふりながら、歩く





そして、八つ当たられた二人は、すっかり忘れられていた


end

2010・Dec
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