牧場物語

□笑える程に、僕の心は
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始まりは、彼女の何気ない一言だった、はず。




「――…でも私、やっぱりジュリが好きだなあ」


「……なんですって?」




某日、午後20時過ぎ。ハモニカタウン、酒場アルモニカにて。

一仕事を終え、久しぶりに立ち寄った宿屋で、アタシは一日の疲れを癒そうと軽く晩酌と夕飯を取っているところだった。

するとそこへ、農作業を終えて同じく夕食を食べにきたのであろうアカリが、店の扉を開けて入った来たのが見えた。

彼女は店内を見渡し、たまたま今日そこに居合わせたアタシの姿を見つけると、少し驚いて嬉しそうな顔で此方へ向かってきた。


「ジュリ!?わ、今日はここでご飯なんだ!」

「ええ、まあたまには気分転換もどうかなと思ってネ」

「へー…あ、チハヤ!私ここで食べるね!」


「あ、相席でいい?」と小さくアタシに問いかけてきた彼女に、「もちろん」と微笑んで返せば、彼女は「ありがとう!」と素敵な笑顔でアタシの席の前に座った。




彼女、アカリとは顔見知りの中でも特に仲の良い友達といった関係で、アタシが今こうしてもう一度仕事に就けているのも、彼女がこの島へやって来て、過疎し始めていたこの場所にまるで再び息を吹き込むかのように、元通りの輝きを取り戻してくれているからである。

彼女とは服や装飾品、趣味や食の好みまでそっくりなもので、会話が絶えることがない。

普段はお互い忙しくて、時間を作るとなるとなかなか会えなかったりするんだけど、今日は偶然。たまたま。そのほんの小さな奇跡に、照れ臭いながらも少しだけ嬉しくなっている自分に気付いた。


適当に今日一日の出来事を報告し合って、談笑しつつお気に入りのお酒を一口、また一口。

そういえば、ここのクランベリーカクテル、こんなに美味しかったかしら?


そのうち彼女が頼んだ料理も運ばれてきて、アタシはかぼちゃのグラタン、アカリはかぼちゃのコロッケと、お互いに食べて話してを繰り返していたときのこと。




「はー…それにしても、ジュリと話してると、本当に楽しい」

「アラ、嬉しいこと言ってくれるじゃない」

「本当だよ?私のくだらない話にこんなに相槌を打って聞いてくれる人、ジュリしかいないもの」

「だって、アナタの話面白いから」

「そう!ジュリはいつもそう言ってくれるよね」


「嬉しいよ、」とどこか切なげに笑った彼女に、ふと違和感を覚える。



彼女、いつからこんな風に笑うようになったのかしら。


違和感というか疑問にも似た、不思議な気持ちに一瞬は支配されるものの、気にしないようにまたお酒に口をつける。甘い。本当に美味しいわ。



そして、



「――…でも私、やっぱりジュリが好きだなあ」


「……なんですって?」




少し頬を赤らめながらそう言った彼女の言葉を、聞き間違えたのかと思った。


冗談、よね?

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