牧場物語

□ピンク・シンメトリー
2ページ/7ページ



キッチンいっぱいに広がる、かぼちゃ特有の甘くて癖になる香り。

頃合を見て、鍋の火を止めようとすると、ふと背後に気配を感じた。


「アラ」

「…ジュリ?どうかした?」

「アカリ、ほつれてるわヨ」


「ホラ、ここ」とジュリが指差して示した私の作業着には、一箇所に糸のほつれができていた。


「あ、ホントだ。…でもこれくらい、」

「ダメよ、ちゃんと直さなきゃ。もしその糸が、機械や動物達に絡まってアカリが怪我したら大変じゃないの」


確かに。私が危ないかどうかはおいといて、この糸がほつれたまま伸びていって、もし機械に挟まれば機械が故障しちゃうかもしれないし、もし動物達にひっかかっちゃったら、あの子たちが怪我をしちゃうかもしれない。

ジュリの言うとおり、直さなくちゃ。でも、


「…私、裁縫とか苦手で…」

「これくらいアタシがやってあげるわよ!」


胸を張ってさらりとそう言ってみせたジュリは、今すぐにでも縫ってあげるからと、なるべく早く服を脱ぐよう私に急かさせた。


お鍋の火、とめなくちゃね。

.
次へ
前へ

[戻る]
[TOPへ]

[しおり]






カスタマイズ