牧場物語
□ピンク・シンメトリー
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キッチンいっぱいに広がる、かぼちゃ特有の甘くて癖になる香り。
頃合を見て、鍋の火を止めようとすると、ふと背後に気配を感じた。
「アラ」
「…ジュリ?どうかした?」
「アカリ、ほつれてるわヨ」
「ホラ、ここ」とジュリが指差して示した私の作業着には、一箇所に糸のほつれができていた。
「あ、ホントだ。…でもこれくらい、」
「ダメよ、ちゃんと直さなきゃ。もしその糸が、機械や動物達に絡まってアカリが怪我したら大変じゃないの」
確かに。私が危ないかどうかはおいといて、この糸がほつれたまま伸びていって、もし機械に挟まれば機械が故障しちゃうかもしれないし、もし動物達にひっかかっちゃったら、あの子たちが怪我をしちゃうかもしれない。
ジュリの言うとおり、直さなくちゃ。でも、
「…私、裁縫とか苦手で…」
「これくらいアタシがやってあげるわよ!」
胸を張ってさらりとそう言ってみせたジュリは、今すぐにでも縫ってあげるからと、なるべく早く服を脱ぐよう私に急かさせた。
お鍋の火、とめなくちゃね。
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