薄桜鬼
□藤堂 平助
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『………平…助くん…』
振り返らなくても、分かる。
その声を聞いて、安心と戸惑いが入り混じったような、不思議な気持ちになった。
「…こんな時間に散歩――、な訳ないよな、」
砂利を掠るような足音と共に、それは近づいてくる。
思い切って、後ろを振り返ってみると、
眉間に少し皺を寄せた、困ったような表情が視界を捉えた。
「……平助くん、こそ……お散歩?」
「あー、違う違う、」
そう、軽く言い流した平助くんは、
ごく自然に、長椅子を見やって、私の隣へゆっくりと腰を下ろした。
「俺、今日夜番なんだって…言ってなかったっけ?」
そう、きょととした顔で、尋ねてくる平助くん。
そう言えばそんなこと――、と先刻のことを、薄く思い出した。
「……あのさあ、」
小さく言葉を吐いた、隣の平助くんをちら、と横目で伺う。
空を見上げるように、月明かりに、淡く照らされた顔。
瞳はどこか、遠くを見ていて、表情は、少し切なげで――
―――とても、綺麗だった。
「……俺が、御陵衛士になること……、……」
「御陵衛士」、その単語が耳につくたび、
私は自分でも分かるほど、肩をびくつかせてしまう。
だけど、今どうしても、確認したいことが、あるんだ。
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