牧場物語

□ふれた指先は少し温かかった
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まだ夜も明けていない頃、隣で眠る彼を起こさないようにそっとベッドから抜け出し、ひんやりとする床に裸の足を下ろした。


なるべく音を立てないよう静かに玄関まで歩いて行き、ドアを開ける。

扉の隙間から顔を覗かせた瞬間、びゅうっと一際冷たい風が頬を撫ぜる。寒い。

けど、澄んだ空気や、まだ少し薄暗いとはいえ雲ひとつない綺麗な空は、もうすぐ太陽が昇り始めそうな今この瞬間しか感じられないもので、私はこの時間が何よりも好きだ。


うん、今日もいい天気になりそう。







動物達に餌をやり、丹念にブラッシングをしてやる。牛さんからは新鮮なミルクを絞り、羊さんからはちょうどいい具合に伸びきった毛を刈る。鳥さんたちの卵を集め、半分は孵化機へ運び、半分はミルクを加工したチーズやバター、そして刈り取って毛糸にした羊さん達の質のいい毛とともに、出荷箱に入れて、蓋を閉める。

よし、とりあえず一仕事は終わり!


出荷箱から腰を上げて、ふと周囲を見渡すと辺りは大分明るくなってきていて、爽快な風が体のまわりに吹き抜ける。


「……ふーっ…、…よし。あの子達を外に出してあげなくちゃね」


一つ深呼吸をして、牧場に建てつけてあるベルに手を伸ばす。軽やかな音色が私の牧場内に響き渡った。



ひとまず自宅に戻ると、先ほどのベルの音で目覚めたらしいジュリが、ベッドの縁にゆるく腰掛けているのが視界に入った。


「ジュリ、おはよう」

「…んー……、おはよう…。…ハニーったら本当に朝から元気ねぇ……」


欠伸交じりにそう言う彼は、昔から低血圧で朝がとても弱いらしい。実際に今もすごく眠そうにしていて、

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