薄桜鬼

□藤堂 平助
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『……ありえない、ほんと勘弁してよ』




そう告げて、ケータイの電源を落としてから数分

オレンジ色したそれは、床上にさみしく転がっていた





ありえない、ありえない!

一年に一度のクリスマスに会えないって…何それ

最初は冗談だと思ってた、本気で言ってるようにも捉えられなかった

それから何度も連絡を取り合って、ついに明日、クリスマスを迎えるという今日


「”……わりっ、やっぱ明日無理そうだ、ごめんなー”」


電子機器越しからでも伝わる、どこか軽はずみな物言いに

どうしても、どうしても苛立ちを抑えることが出来なかった




何やってんだろ……、私

部屋の灯りに照らされたそれを、横目でちら、と様子を窺う

何も光らず、びくともしていなかった

手を伸ばそうとしてみるも、反抗心だけが神経を支配して

その日は枕を抱いて、見えない何かに縋りつくように眠りについた





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