薄桜鬼

□藤堂 平助
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ふっと、両手の温もりがなくなった。

気付けば、彼の手は、私の頬の涙を拭っていて、

もう片方は、優しく撫でるように、私の頭へとのぼった。




「……俺が出て行くのは、嫌だから、じゃない。

……それだけは分かってて、…な?」




どんどん溢れてくる私の涙を、一粒一粒丁寧に拭いながら、彼は呟く。


そして私の頭に乗ったのであろう、一片の桜を、手に収めた。





「……こ…っんなこと…言っていいか…分かんない…けど…、


……私、は……会い…たい……、

…敵でも、何でも…平助くんにずっと…、…会いたい…よ……」





心の内を、すべて伝えることは、難しくて。

涙で潰れてしまう声を、必死に絞り出した。




すると平助くんは、自分の手のひらを、私のものに重ねて、

先程の、桜色の花びらを、私の手のひらに、ゆっくりと落とした。





「……この花びら、お前が…持ってて。

……それで……この花びらが、干からびるまでに、

……もう一度、お前に会いにいく、絶対。……約束、する」





そう言った彼は、より一層、優しい微笑を浮かべる。

そして、彼との距離を近くに感じて、。

零れ落ちる、雫を感じながら、私は自然と目を閉じた。







柔らかく温かなぬくもりを、頬に感じるとともに、

桜色した大切な約束を、確かめるように、握り締めたのだった。











あのとき君を離さなければ、運命は変わっていたかもしれない

(きみを手放してしまったから、?)

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