薄桜鬼
□藤堂 平助
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『……平助くんは……、もう…戻ってこないの……?』
平助くんの声を遮るように、放った私の言葉は、
思っていたよりも、儚く、闇に消え入りそうだった。
「………そう、なりたい、訳じゃない…、
…俺も、よく分かんない。正直言うと、な。
だけど…今は……自分の信念、…貫きたい、って…」
そう言う彼の声色は、どこか弱弱しく感じられて。
だけど、迷いのない、真っ直ぐな瞳が、そこにはあった。
『……私は…、…平助くんに…行ってほしく…ない…っ………』
言ってはいけないのに、喉をついた言葉は、口から小さく漏れる。
なんだか泣きそうになって、言葉の最後が、微かに震えた。
じっと見つめてくる、彼の視線に耐えられなくて、思わず俯く。
緊迫の状況に、膝においた手が小刻みに震える。
すると私より少し大きい、逞しい手が、私のそれに被さった。
そのまま、温かい彼の両手に、優しく包まれる。
咄嗟に、俯いていた顔を上げると、
とても柔らかく、優しい表情が、私の視界いっぱいに広がった。
「……ごめん、…もう決めたんだ…、
……だけど……新選組(ここ)を離れるからって、
………みんなと、二度と会えない訳じゃない、」
ざあっと、春一番の風が吹いた。
平助くんの長い髪が、舞い散る花びらのように、揺れる。
「……俺が、新選組を離れても…、
……新選組を嫌いになることなんて、絶対に、ないから。
………私情、ばっかだけどさ…、
……たとえ、敵になったとしても…、みんなと、
…………お前と、もう一度会えること、望んでる」
そう言った平助くんの表情は、手は、とても温かくて。
私の頬にも、温かい何かが、一滴伝っていた。
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