宝箱

□弟のおねだり
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綱吉曰く、人間用で良かったが、大人がつける大きさでないと嫌ならしい。

彼みたいな子供の細い首じゃ、ぶかぶかになっちゃうんだけどな。

そう思いながら、僕はまた、同じデザインの首輪を購入した。


そして再び、僕は綱吉に驚かされる。


「ん…っと…」

「…………………」

「っ…よいしょ…」

可愛い声を発しながら手を動かす綱吉に、僕は口を開けたまま固まった。

ブラウンの髪がふわふわと揺れるのを目で追いながら、僕は無言で目をパチクリさせる。


“どうして僕が綱吉に首輪をつけられているんだ?”


それを口にしようとして、綱吉の顔が僕に向けられた。

「できたっ!!」

満足そうな表情を浮かべた綱吉は、僕の頭に手を伸ばすと、小さな手で髪を撫で始めた。

「…にぃたんの髪の毛、さらさらしてる」

「………綱吉?」

「うん?」

「どうして僕が首輪をするの…?」

僕は綱吉の腰に手を回すと、彼の耳元で囁いた。

すると、間があってから綱吉の顔はリンゴみたいに真っ赤になって、恥ずかしそうに僕の胸に頭を埋めた。

「……綱吉?」

「だって……ツナは」


そこまで言うと綱吉は小さな声で、ごにょごにょと呟いた。


なにを言っているのか聞こえなくて、僕は綱吉の両脇に手を回して僕から引き剥がした。

頬を染めた綱吉はびっくりして、咄嗟に顔を俯ける。

「……ちゃんと言わないと、この首輪はずしちゃうよ?」

「だっ、だめ!」

綱吉が頑張ってつけてくれたから、僕に外す勇気は無いんだけど。

僕が脅すように言えば、おずおずと綱吉は話した。


「ツナは……本当は、ねこさんが欲しいけど……ムリだって知ってるから………」

「知ってるから?」

「くびわ…かって…それで、恭弥にぃたんにつけたら…ねこさんみたいになるかなって…」

「………………」


話し終えた綱吉は、どうしてか泣きそうになっている。
僕がなにも言わないから、怒ってると思ってるのかな。

…そうじゃないんだよ。
可愛いすぎて、鼻血が出そうなのを堪えてるだけ。

「や、やっぱり、くびわ…はずす!」

「ふふっ、いいよ。はずさなくて」

慌てて首輪に手を掛ける綱吉に、僕は笑って言った。

綱吉は驚いた様子で僕を見る。

「このままで、いいよ。」

「……いいの?」



「うん。だけどさ綱吉……こんなので、ねこさんみたいに見える?」

犬だって首輪するよ?と僕が言うと、綱吉は閃いたように目を光らせて、なにかを探しに行った。

数分してから綱吉は背中に何かを隠して走って来た。

「これ!」

そう言って綱吉が差し出したのは、「ネコ耳」。
すぐに僕は、あんなこと言わなければよかったと後悔した。


案の定。
目を光らせた可愛い弟に「つけて」と言われれば、断る術がなくて、僕の頭には二つの耳が生えた。

なにが楽しくて、15にもなった男がこんな格好しなければならないんだろうか。

…まぁ、これで綱吉のとびきり可愛い笑顔が見れるなら安いものか。





その後、約束もしていないのに勝手に遊びに来た、自称「恭弥クンのお友達」の六道骸に嘲笑されたのは、また別のお話。



(fin)
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