宝箱
□弟のおねだり
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弟のおねだり
10も離れた弟の話をしようと思う。
ちなみに僕、恭弥は15歳。そして、可愛すぎる弟の綱吉は5歳。
とある休日。リビングで読書をしていた僕に近寄って来た綱吉。ぽてぽてと短い足を動かして僕に小さな手を伸ばす。
「恭弥にぃたん…」
「んー?なぁに、綱吉」
僕は本をパタリと閉じると、腕を広げて綱吉を抱き留めた。
ぽふっと僕の胸に頭が収まると、僕は反射のように綱吉の頭を撫で回す。
暫くそうしていると、綱吉が大きなハチミツ色の目を僕に向けた。
「にぃたん。あれ…」
綱吉はそう言うと、テレビに向かって指を指した。
そう言えば読書に夢中で、点けっ放しだったなと思い出す。
「テレビがどうかしたの?」
「テレビじゃなくて…あの、ねこさんの」
見れば、画面には、飼い猫特集というタイトルの番組がやっていた。
綱吉はキラキラした瞳で僕を見つめる。
なるほど、綱吉は猫が欲しいみたいだ。
僕も猫は好きだけど、飼うとなると話が別だな…だけど、普段、あまり物を欲しがらない可愛い弟の頼みだし。奈々に相談しなくちゃならないな。
なんて、僕が勝手に考えを巡らせていると、綱吉が僕の服の袖を引っ張った。
「にぃたん」
「ねこさんを飼うには、ママに相談しないとね」
そう言えば、綱吉はフルフルと頭を左右に振った。
「ねこさんじゃなくって…」
「?違うの?」
僕が不思議そうな顔をすると、綱吉は僕の膝から降り、画面に近付いて猫を指差した。
「ツナ…これが欲しいの」
「だから、それは…………」
猫だよって言おうとして僕は止めた。
よく見れば、彼の可愛い指は猫の首辺りを指している。
僕は漸く綱吉の欲しい物の正体が分かった。
「綱吉は、首輪が欲しいんだね?」
「くびわ…?」
「うん。その、ねこさんの首についてる…」
そこまで僕が言うと、綱吉は嬉しそうな笑顔で僕のもとに戻って来た。
そして膝に座ると、ぎゅっと僕の首に抱き付いた。
「つ………な…よし…っ」
いきなりのことに僕は目を丸くさせる。
「うん。あのね、ツナね…くびわが欲しいの……恭弥にぃたん、かって?」
女の子みたいな声でおねだりされて、僕は顔が熱くなる。…いや、体
「いいよ。買ってあげる」
「ほんとぅ?!にぃたん大すきっ!」
綱吉は満面の笑みを浮かべて、僕の頬にキスをした。
あぁ…僕、綱吉になら殺されてもいい。むしろ殺されたい。
その日のうちに、僕は早速、首輪を購入した。
その際に気付いたのが、猫用の首輪が欲しいのか、それとも人間がするファッションアイテムの首輪が欲しいのかということだ。
僕的には、綱吉が首輪をする姿が見たかったわけで、僕の独断で彼に似合う、真ん中に黄色の鈴のついた桜色の首輪を買った。
そして、それを綱吉に見せたときだ。
「綱吉。くびわ買ってきたよー。」
僕はそう言って、包みから首輪を取り出して綱吉に見せた。
すると綱吉の顔が少し曇って、なにか言いたそうな表情を浮かべる。
やっぱり、猫用の首輪が欲しかったのかと思っていると、綱吉が呟いた。
「もっと、おっきいの…じゃないとダメ」