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数年前。

彼が、運び屋を始めて間もない頃。

あたり一面に転がる死体を、銀識・・・否、その時はまだそうではないから、赤屍はただただ、首を傾げながら見つめていた。


「・・・おや?」


何故だかはわかならないが、仕事でもないのに、無性に人殺しがしたくなった。
気がついた時には、その場にいたすべての人間が血まみれのバラバラになって死んでいた。
それでも、何も感じられない。
仕事の時は、それなりに何か感じるものがあるのだが・・・・。


「おやおや、これは派手にやったねえ。」

「!?」


その声に後ろを振り向くと、針金細工のようなシルエットの男がいた。

これが―――零崎銀識と零崎双識の初対面である。


「こりゃあ・・・町一つとまではいかなかったけど、町内一つぐらい殲滅してしまったんじゃないのかい?」

「だからなんですか?」


赤屍は双識を警戒し、メスを握り直した。
多分、双識が普通でないということが、経験から一目見ただけで分かったのだろう。
彼が・・・強いということも。


「いやいや、そんなに警戒しないでくれ。それよりも家賊にならなぬああっ!!!?」


双識はあわてて飛び退く。
先程まで双識が立っていたところに、メスが突き付けられている。
飛び退かなければ、きっとコマギレになっていたことだろう。
双識はブンブンと両手を顔の前でふった。


「まってまって待ってくれ!!俺は今手ぶらなんだ!!素手なんだ!っていうか人の話は最後まで聞いてくれよ!!」


この頃の双識はまだ自分のことを「私」と言うほど大人びていなかったし、まだ自分の得物、マインドレンデルを手にしていなかった。


「・・・・・・・・なんですか。」

「そんなに睨まないでくれよ・・・。君、私の家賊にならないか?」

「・・・家族?」

「『家族』じゃなくて、『家賊』だよ。つまり、流血で繋がる家賊。血ではなく流血で繋がる、家賊。それが俺達零崎一賊だ。」

「『ぜろさきいちぞく』・・・・ですか?」

「そう。零崎一賊。零崎一賊は簡単に言えば殺人鬼の集団だ。動機もなく道理もなく理由もなく利益もなく目的もなく黙想もなく原因もなく意見もなく威厳もなく境地もなく恐怖もなく作為もなく策略もなく嗜好もなく思想もなく・・・あとは割愛するとして、純朴かつ潤沢な殺意のみで人を殺す殺人鬼。」

「私もそう・・・だと?」

「そういうことだね。」

「家賊になれ・・・・と?」

「あぁ。なってくれないかな?あ、自己紹介が遅れたね。俺は零崎双識。」

「・・・・・・。」


赤屍には、『家賊』など全然興味はなかった。
が、双識と同じ“世界”にかかわれば、今までよりさらに強い人間と戦えるのではないかという考えが、赤屍にはあった。
だから・・・・。


「・・・なっても、いいですよ。」


そう答えた。


「本当かい!?それは嬉しいな!そうだ、君の名前は?」

「赤屍蔵人と申します。」

「蔵人君か。じゃあ、よろしく!」


双識が右手を差し出してきたので、赤屍はメスをしまい、双識と握手を交わした。

そして彼はそのあと、「零崎銀識」という名前をもらい、後に《冷酷無惨(カッティングカルマ)》や《人類最愛》などとよばれるようになる・・・・・。










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