零崎一賊の最愛家賊
□3.通り名
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一方その頃。
花月は苦い顔をして目の前の死体を見ていた。
零崎化した時のような殺人衝動に襲われ、自制が効かずに殺してしまったのだ。
「あっちゃぁ・・・・。」
殺しに罪悪感等が残らないのが零崎とは聞いていたが、ここまで何も感じないと、逆に違和感のような物が残った。
「――――――ッ!!?」
次の瞬間、とてつもない殺気を感じ、花月はその場から飛び退いた。
それと同時に、今まで花月が立っていた場所が爆ぜた。
驚いてその場所を見ると、二人の顔の良く似た少年が巨大な剣を構えて立っていた。
「だ、誰だ!!」
「匂宮雑技団が分家・・・椎本(しいがもと)紅葉(くれは)。」
「同じく、椎本蒼葉(あおは)。」
「匂宮・・・だと・・・?」
昨日、裏世界に付いて双識から改めて詳しく聞いていた花月は驚愕した。
殺し名序列一位であり、本家「匂宮」だけでも残る全ての殺し名と呪い名を相手にしても引けを取らない強大な戦力を持つという、「殺し屋」ギルドのような存在だと言う。
分家の苗字は全て源氏物語の各帖の名前に由来しているらしい。
「貴様、零崎の人間だな?」
「――ッ!」
今の殺人でばれた様だ。
何故匂宮の分家が零崎を狙っているのかは不明だが、今の状況はまずい。
自分は裏世界に入ったばかりだし、裏世界の人間がどれほどの実力なのかもわからない。
だが、簡単に逃げられる状況でもなさそうだ。
「あぁ・・・・そうだよ。」
とりあえず、相手の質問に答える。
「やはりな」と言い、二人は巨大な剣を構え直し、花月に飛びかかった。
(速い――――っ!)
もし、これが裏世界での基準だとしたら、いつまで持つかわからない。
こちらも攻撃を仕掛けるが、思う様に当たらない。
「「遅いな。」」
「っつ!!」
気付けば二人は目の前にいて、剣を振りかぶっていた。
「痛―――――っ。」
防御が間に合わず、脇腹に太刀を喰らう。
ドサッ、と花月は地面に崩れ落ちた。
「その様子だと、まだ無名だな。」
「無名のまま、逝かせてやる。」
「――――――――――ッ」
二人が剣を振りかぶったのを見て、こんなところで死ぬのか、と思いながら花月は目を閉じた。