零崎一賊の最愛家賊

□12.鴉の濡れ羽島
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この林に住んでいるのであろう動物たちと、少女は戯れていた。


「ばっけおーりちゃ〜ん♪」


春日井が声をかける。
すると、彼女はハッと顔を上げ、嬉しそうに顔を綻ばせた。


「春日ちゃん!おかえりなさい!」


鈴を転がすような声とは、このことか。
そう思うほど、少女―――零崎化織の声は澄んでいた。

春日井を見た直後、化織は赤屍と花月の存在に気づく。
そして、一瞬驚いた後、また嬉しそうに笑う。
ダッ、と。
少女のものとは思えない跳躍力で、化織は赤屍に飛びついた。



















「銀ちゃん!」

「ブフッ」


その呼び名に、花月は思い切り噴き出した。
『銀識』から『銀』を取ったのだろうとは安易に予測できた。
だが、けど、『銀ちゃん』て・・・・・。
そんな花月を見て、赤屍は苦笑いし、化織はキョトンと首を傾げていた。
春日井は何が面白かったのか、必死に笑いをこらえている。


「遅いよ銀ちゃーん。新しい家賊ができたなら早く来てくれればいいのにさー。私の存在忘れてたの?うーわー。ナニソレ。ひっどーい。」


赤屍に向き直り、彼の腰にギュゥウっと抱きつきながら、化織は頬を膨らませた。


「すいません、忘れていた訳ではないのですが。」

「まー許すけどねん。この子だよね?新しい家賊。」


化織は赤屍に抱きついたまま、花月に視線を向けた。


「あ、え〜っと、風鳥院花月、もとい零崎絃識です。」

「うん!私は零崎化織!よろしくね!!」


ガバァッと、化織は花月に抱きついた。
脇で赤屍が後ろを向いて悶えていたのを、花月は見ていないふりをした。

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