零崎一賊の最愛家賊
□12.鴉の濡れ羽島
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鴉の濡れ羽島。
日本海に浮かぶ、絶海の孤島。
春日井、花月、赤屍の三人は、クルーザーでその島に向かっていた。
「ようやく着いた。長旅だったね二人とも。」
ようやく見えてきたその島を見て、春日井春日は花月と赤屍を振り返った。
「この距離をイカダで渡った貴女が言いますか。」
と、花月はため息交じりに言う。
春日井がイカダを作って島から脱出した話は、彼女から自慢話として聞いていた。
それに対して赤屍は―――――眠っていた。
爆睡である。
しかも―――――花月の膝枕で。
静かに眠る赤屍の頭を撫でながら、花月はまたため息。
この膝枕、花月が許可したわけではない。
花月の隣に座っていた赤屍が、いきなり花月に向かって倒れこんできたのだ。
いきなりの事に、花月も全く対応できず、膝の上での睡眠を許してしまった。
っていうか、花月が何か言おうとしたときには赤屍はすでに眠っていたのだが。
「蔵人クン、起きないね。」
「えぇ・・・・どうしましょう?もう着くんですけど。」
「着いたときに起こせばいいさ。ギリギリまで寝かしておこうよ。きっと疲れてるんだ。」
「そうですね・・・・・。」
理由は分からないが、何だか疲労が溜まっているらしかったので、花月は春日井の意見に賛同した。
大変な仕事でもやった後だったのかもしれない。
それに、よく考えたら彼は家賊を三人養っている身なのだ。
「疲れたっておかしくないよね・・・。」
『魔人』だの『バケモノ』だの言われていても、やっぱり疲労はたまるものだ。
花月はまたため息をつき、だんだん近づいてくる鴉の濡れ羽島を眺めた。
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