零崎一賊の最愛家賊

□9.夢中魔女
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その日は、花月は赤屍宅に泊っていた。
真夜中、彼は頬に当たる風の感触に目を覚ました。


「・・・え?」


起き上がると、そこは自分が眠っていた部屋ではなく、草原。
地平線まで広がる草原に、彼は寝ていた。


「え〜っと・・・ここは?」

「まあさしずめ、君の夢の中ってところかしら。」

「!!」


突如聞こえてきた声に、花月は驚いて振り返った。
そこには、一人の女が立っていた。
肩にかかるほどの黒い髪。
黒いドレスに白いスカーフ。
そんな恰好の女が花月に微笑みかけていた。


「えっと・・・貴女は?」

「ふふっ・・・はじめまして。私は、零崎紅織(あかおり)。よろしくね、絃識くん。」

「零崎――――っ!?」


右手を差し伸べる彼女の名前に、花月は驚愕する。


「ごめんなさい。驚かせちゃったわね。」

「い、いえ・・・。でも何で、僕の夢の中に?」

「あぁ・・・この方法でしか、私はもう人に会う事は出来ないから・・・・。」


そう言って、紅織は悲しそうに笑った。
意味がよくわからず、花月は首を傾げる。
紅織は、その様子を見て「クス」と笑った。


「私ね・・・・もう、十年以上前に死んでるのよ。」

「―――――――!!!!?」

「ようは、幽霊ってことなのよね。」


唖然とする花月の頭を、紅織は撫でた。


「ごめんね、びっくりした?」

「あ・・・・は、はい・・・・・大丈夫、です。」


ならよかった、と。
クスクスと、紅織は楽しそうに笑った。


「っていうか・・・実はね私、人間じゃなくて・・・・・・・・魔女なのよ。」

「えっ。」

「魔女で殺人鬼。面白いでしょ?」


そう言って、紅織はクルクル回って見せる。


「だからね〜。家賊っていうより、流血で繋がったご先祖様って言った方が近いかな?」

「ご先祖様・・・・。」

「そ♪百年以上生きたからね〜♪」


すごいでしょ?と紅織は微笑む。
呆然としたままの花月がおかしかったのか、紅織はまたクスクス笑い出す。


「そういえば、絃識くんはマリーアのこと知ってる?」

「マリーサさん・・・?」

「知っているみたいね。彼女にもよろしく言っておいてくれない?彼女とは友達だったから・・・。」


微笑んだまま、紅織は一歩花月に近づいた。
花月の顔を両手で挟む。
ひんやりとした両手が、花月の頬を冷ます。
すぐ目の前まで来た彼女の顔を見て、花月は心の中で首を傾げた。


(この人・・・誰かに似ているような・・・・・・?)

「じゃあ、家賊のコト、よろしくね。」

「あっ・・・・・」


軽く肩を押された。
それと同時に視界が真っ暗になった。

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