零崎一賊の最愛家賊

□プロローグ
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「え・・・・・・・・?」







血に染まった自分の両手を見て、一人の青年は驚愕した。


その周りには、死体、死体、死体死体死体死体死体死体死体死体死体死体――――


腕が取れていたり、足が捥げていたり、体を真っ二つにされていたり・・・・・

青年は茫然と、真っ赤に染まった両手を見つめ続けた。



「なんで・・・・・。」



周りの死体は彼に危害を加えた訳ではない。

極普通にそこに存在していただけなのだ。

しかしそれらを見た瞬間――――――





恐ろしいほどの“殺人衝動”が、彼を襲った。





次の瞬間、彼は狂ったようにその場にいた人間を殺し始めた。

そして、気付いた時にはこの状態だった。

今までこんな事無かったのに、と青年は地面に膝をついた。

そして、彼が自分自身に恐怖した。

これだけ殺したのに、今まで以上に殺したのに





罪悪感も、それ以外の何かも、全く何も感じない――――――――――





自分の両手を見つめて首を傾げる。

「――――あ!いました、いました!」

「!!!!」

突如聞こえた声に、青年は体をこわばらせた。

振り向くとそこには一人の少女がいた。

赤いニット帽にパーカーと女子高生の制服のようなプリーツスカート。

どういう訳か周りの死体など見えていないかのように嬉しそうに青年に近付いてくる。


「・・・だ、誰・・・・?」

「へ?あ、私は無桐伊織です。」

「はぁ・・・・・。」


素直に名前を名乗られ、青年は困惑するしかなかった。


「もしくは、零崎舞織でもいいですよ。」

「は・・・・?」


『もしくは』ってなんだと青年は首を傾げる。

すると、無桐伊織と名乗った少女はスッと青年に手を差し伸べた。


「はじめまして!よろしくお願いします、新しい家賊さん♪」

「え・・・・・・・・?」


突然“家賊”と言われ青年は困惑する。

それでも、彼は無意識のうちに伊織の手を取っていた。

そして気付く。

彼女の手が人間そのものではなく、人工の物である事に。

伊織はニコッと笑い青年の手をそっと握った。


「え〜っと・・・・お名前は何ですか?」


慎重に手を握るあたりを見ると、まだ義手に慣れていないのだろう。

青年はそう思いながら、名前を述べた。













「風鳥院・・・・・・風鳥院、花月です。」


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