08/16の日記

23:57
というわけで、before 『用意周到』
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一月も半ばだというのに、唐突に静雄が言った。
「トムさん、ズッキーニってどうやったら美味く食えるんすか……?」
何でお前がよりによって生でもいけるキュウリじゃなくてズッキーニに手を出したんだよ?!ってか、その言い方はお前、すでに一回生で食ったな?!!そもそもズッキーニなんざ夏野菜なんだからシーズンオフだろうがよ、と突っ込みどころがぐるぐる頭の中を回って、俺の口から出た言葉は
「…………ラタトゥーユとかじゃねえか?」
だった。
「ラタトゥーユ?何すかそれ」
「………フランスかどっかの野菜の煮込み料理だな」
「そんなんがポンって出てくるって、トムさん、流石っすね」
「ま、トマトの缶詰とか使って、野菜を何でも煮込めばいいんじゃねえの?」
ぶちこんで煮る。ある意味お前に向いてるだろ?と言う俺の言葉は静雄の耳には既に届いていなかった。
「………やっぱバナナしかねえか……」
とか呟いている。
「ラタトゥーユ。南仏プロヴァンスの料理と把握。元は軍隊や刑務所とかで出る料理のため、まずい、粗末な料理の代名詞として遣われていた。しかし、新鮮な野菜を使った美味しいものは美味しい、という料理です。ラタトゥーユにバナナは必要ありません」
調理法では無く雑学的な知識をヴァローナが淡々と述べる。
こいつも多分ラタトゥーユを作ったことはねえんだろうなぁ、と、ぼんやりと思う。可愛いし、いい身体もしてんのに、どこか残念。普通なら「ラタトゥーユ、作ってあげようかぁー?お部屋で♪」なーんて言って、女子力とやらを男に披露する、そういう話の流れになると思うのに、これだ。
それに対する静雄も何を考えているんだか
「やっぱズッキーニはダメだな……」
と言っている。
相変わらず噛み合っていない。

それでも、ヴァローナが静雄に対して意識をしていることに、俺は気付いていた。
静雄が何かをしでかす度に、目で追っている。静雄の弟が仕事場にやって来たときなんか、気が気じゃ無い様子で覗いていた。
が、ヴァローナの性格からいって、多分今までまともな恋愛ってのをしてこなかったのではないだろうか?
ヴァローナは自分の事をほとんど語らないので、真偽の程は解らないけれど、俺の勘はそう言っている。
経験値の少なさゆえか、そもそも自分の感情を出すことが苦手なのか、恋愛感情というには仄かすぎる、でも、普通とは明らかに一線を画すその感情に、恐らくヴァローナ自身は気付いていない。
本人がそんなんだから、さらに疎い静雄がそのヴァローナの好意に気付くわけも無い。

だから、俺としては、ある意味、気が気じゃ無い。
俺がもしも静雄の立場だったら、『女は別腹だからよ』ってやっちまいそうなもんだ。
だって……ヴァローナは超絶いい身体をしている。
あのでかいおっぱいを揉みたくない男がいるだろうか?いや、居ない!!!
静雄には無いあのおっぱいを揉みしだいて、顔を埋めたい。何なら…間に挟んで……
「トムさん?」
静雄に覗き込まれて我に返る。
「あ?おう、どうしたべ?」
「いや、午後からの仕事の場所ってこっちでいいのかなーって思ったんで」
「あぁ、あってっぞ」
頭に浮かぶパイ……画像を静雄に半強制的に掻き消される。
「さーて、午後も頑張って取り立てっとすっかね」
ちょっとした罪悪感を打ち消すように伸びをしながら呟く俺に、静雄とヴァローナは
「「はい」」
と実に揃っていい返事をしてみせた。


取り立てがトリオになってからも、静雄は弟に映画のチケットを貰ったというと、必ず俺を誘ってくる。
「トムさん、幽がまたくれたんすけど、一緒に観に行きませんか?」
それをヴァローナは少し羨ましそうな顔で観ている……ように、俺には見える。
「ヴァローナも行くか?」
と誘うと、さっきまでの表情や感情はまるで無かったかのように
「そういう吸血鬼だとか、妖怪とかの人外生物が出る映画は、興味が皆無です」
と言った。
あー、強がってんなー……と俺は思っているのに、静雄は
「幽の出てるのはすげえんだからな!!一度お前も観てみろよ!」
と言う。前なら「幽の映画にそんなこと言うんじゃねえ!」とブチ切れそうなもんだと思って俺としちゃ内心ヒヤヒヤものだったが……ヴァローナは静雄の初めての後輩だということもあるのか、静雄はヴァローナには結構甘い。
じゃあ、何故そのチケットでヴァローナを誘ってやんないんだ?と思って、静雄に聞いてみたら、静雄はあっけらかんとこう言った。
「幽が2枚くれたってことは、トムさんと行けってことだと思うんで」
なるほど。
静雄の弟には俺と静雄の関係がバレてるからな……そんな弟が、前は一枚だったチケットを二枚くれるようになったってことは、俺の分だから、絶対に俺を誘ってくる訳か。

だから余計に、俺は確認したくなった。
それが、弟からのチケットじゃなかったら、お前はヴァローナを誘うのか?と。
別に、俺以外を誘ったからって、静雄を責めるつもりは無い。
ただの、確認だ。
そう、どこか自分に言い訳をしながらも、不安を感じている自分が居ることに気付いていた。

静雄が好きそうな格闘技の映画の前売り二枚を買って、社長から静雄に渡してくれるように頼む。
「てめえが直接労ってやりゃいいだろう?」
と訝しみながらも、社長は受け取り、自然に静雄に渡してくれた。
「え?俺っすか?いいんすか?」
戸惑う静雄に、社長は言った。
「まあお前、もうすぐ誕生日だろう?」
とっさにその言葉が出てくる社長はすげえな、と思う。
すると、ヴァローナが即座に反応した。
「静雄先輩の誕生日は、いつなんですか?」
「あぁ……明日だよ」
ヴァローナに答えた後、直ぐに静雄は「社長、あざっす!」と礼を言って貰った前売り券の内容を確認した。
「お!すげえ!これ気になってたんだよな!」と小声で喜んでいる。お気に召したらしい。
そしてまるで条件反射のように、言った。
「トムさん、行きませんか?」
口から飛び出しそうになる雄叫びを飲み込み、小さくガッツポーズ。
ヴァローナには悪いが……この賭けは勝たせて貰ったぜ!と内心毒づく。まあ、そもそもヴァローナは俺の真意なんざ気付いちゃいねえんだから、賭けもへったくれも無いが。
でも、あんな中身は若干残念な不思議ちゃんといえど、金髪ナイスバディ美女と、小さいドレッドなおっさんでは明らかに美女に軍配が上がりそうなものなのに、静雄は当然のように俺を選ぶ。それは、安心感であり、優越感でもあった。
確認して悪かったな、と思う面もあるにはある。でも、不安になるのも普通じゃねえか?とも思う。
誰が見たって、お似合いの二人なんだ。三人で歩いていたら、後ろ二人が付き合っているように見えるってのも、解っている。
俺が女は別腹だって思うように、静雄がヴァローナを選んだっておかしくないとも、心のどこかでは思っている。
それでも、静雄は何の迷いもなく俺を選ぶ。
あいつはホモな訳じゃねえし、俺と違って女の柔らかさを知らないからかもしれないけれど。

ヴァローナはその言葉の意味を理解している訳もなく
「明日は仕事が無い日なので、祝うことが不可能です」
と淡々と言った。
「あ、じゃあ、酒とかケーキとか何でもいいからよ、静雄に買ってきてやってくんねえか?」
俺の言葉に「了解しました」と言って、ヴァローナは会社から出ていった。
あくまでも淡々としていたが…内心は焦ったのだろうか。
ヴァローナにしては珍しく、携帯を落としていった。
そこで俺は……その携帯をデスクに片付けた。

ヴァローナは思った以上に早く帰ってきた。
流石ロシア人と言うべきか、瓶のウォッカが入っている。
「こんな粗末なものしかありませんが、どうぞ収受ください」
と恭しくコンビニの袋を差し出す。
「おう、あんがとな!」
という静雄はやけに嬉しそうだった。

「ほーら、閉めるぞ」
という社長に
「あ、すんません、ちょっとだけいいっすか、仕事が残ってて。何なら戸締まりは俺がするんで、社長はもう帰ってくれて構いませんよ」
という。まあ、その仕事は絶対に今日中にやらなきゃならないものでは無かったが。
「おお、そうか?まあ、早めに出るようにしろよ?」
そう言って、社長はヒラヒラと手を振って出ていった。
「ヴァローナも帰っていいべ」
俺が促すとヴァローナは「了解しました」と言って、会社から出ていこうとした。
そんなヴァローナに
「ヴァローナ、あんがとな」
と、静雄は後ろから声をかける。ヴァローナは静雄がコンビニ袋を掲げて微笑んだことに、少し表情を緩ませてから、小さく会釈して帰っていった。

「で、トムさん、仕事って何すか?」

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08:33
超絶敗者ではありましたが……
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思いっきり今回のコミケは負け組でした、えつです……
落書きのペーパーだけは辛うじて作りましたが、机の上に何もないのがあんなに辛いとは思わなかった……
あれならまだエロくないエロ小説書いて、居たたまれない気持ちで逃げまくってる方が遥かにマシだった。。。
挙げ句、ちょっと1つだけ企業に買い物に行きたい!と思ったら、今まで見たことないようなエグさで、延々駐車場で待たされました……スペースに帰ってきたときにはもう疲れ果てました……後で見たら……列崩壊とかまとめられてた……
でもスペースに帰るまでに時間がかかりすぎて、自分が醸し出すやる気の無さとダミー臭が耐えられませんでした……体力が限界だったこともあって、まるで逃げるように撤退してしまいました……

言い訳にしかならないので嫌なのですが、体調不良で朝から病院に行って、色々な科に回されて、検査されて、採血するのすら30分安静で、終わったら夕方……
とかだったので、待ち時間の合間合間に携帯で文章を作っていました。
でも携帯では推敲がしにくいので、パソコンに送って、そこから再度推敲、加筆……また携帯に送信、ってしてたら、物凄く時間がかかったという。
8月中に仕上げる!と自分で期限を決めてみたので、それは守るように頑張ろう……

ちなみに、携帯で作成して、そこから推敲して加筆修整している(ペーパーなり本なりにする場合はそこからアウトプットして校正する。)ので、before_afterが解る状態なので、「ちゃんと書き始めてはいたんだーーーー!!!!」ってことと、「あ、何だか微妙に変わってる」っていう違いを楽しみたい方は、次の日記もご覧くださいませー。
私はそういう細かいの、好きだけどな……メイキングとか大好き♪♪♪

8月中に上げる予定の完成品と合わせて見てみたら、「あ、微妙に違う」「……むしろ改悪じゃね?」ってなるかもしれません。

ちなみにこれだけチェックしてても誤字る時は誤字るんだぜ……

ペーパーも、1枚も減らないで持って帰る羽目になるかもな……と思ってましたが、どなた様か存じ上げませんが、いただいてくださった方がいらっしゃるみたいで……!!!
ありがとうございます!!!落書きに付き合わせてしまい申し訳ありません!!!

で、今回気付きました。
小説サークルさんで、「普通の文庫本ですよー」って顔した本作ってるとこ、結構ある!!!!すごーい!!こんなにあると思わなかった……
でもさ、小説だもん、パッと見どんなエロいこと書いてても、絵じゃ無いから判らないじゃん!!!ブックカバーさえ付けちゃえば、どこでも素知らぬ顔して読めるじゃん!!!
考えることはやっぱり皆様同じなんだなー!と思ったえつだったのでした!

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