SS 2

□愛縁奇縁
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静雄は俺に、「トムさんは俺のどこが好きなんですか?」って、ほとんど聞かない。そもそも聞いてきた事が、無い……かもしれない。俺の記憶を辿ってみたものの…やっぱり記憶に無いという事は、言った事が無いんだろう。

それは、恥ずかしいのと…それ以上に、あいつがどこかで自分を否定し続けて来た名残なんだろうと思う。
自分で自分の事を好きじゃない奴に、「自分のどこが好き?」なんて聞けるはずがない。在りもしない答えを相手に求めるなんて、恐怖に他ならない。そこで返ってきた答えが、『沈黙』だったら?
そして、そんなことを言えるのは、相手に愛されている自分に自信がある奴だけなんだろう。

まあ、俺みたいな奴の場合は、逆に聞いてみたくもなるが。
「俺のどこがいいの?」
静雄みたいに背が高い訳でもないし、顔がいい訳でも無い。
収入だって決して高いとは言えないし、学歴だって微妙。
まあ、だからと言って卑屈になってる訳じゃねえし、俺は気遣いにかけては結構イケてると思うんだよな。

俺は静雄に聞いた事がある。
静雄は真っ赤になって、困った顔をした後「………全部、っす」って小さな声で呟いた。

台所に立つ、185cmの男を見る。
必死で何かを作っているが、まあ大したものは出てこない事は分かっているので、無駄な期待はしない。
でもその一生懸命さが、愛しい。
……それにしても、細い腰だよな。細さで言うなら、女の方が細いのかもしれないが…多分、尻が小さい事もあるんだろう。静雄は骨格的に言うなら、本当に華奢だ。
肩幅だって俺の方が広い。
ガリガリな訳でも無いから、程々には筋肉はついているのに、本当、細い。

気付けば、静雄の方に歩み寄って、背後から腰を抱き締めていた。
「トムさん!!?」
腰の位置が高いのが…アレだよな。こいつ、超脚長えし。
女の子相手だったら、大体同じくらい、もしくは俺よりちょっと低いんだけどよ。
静雄相手だと、しがみついてるみたいになるのがちょっと難点だよな……。
「トトト、トムさん?!急に、どうしたんすか!?」
俺の行動に動揺したようで、何かがグシャ!って音を立ててつぶれた。
覗き込んでみると、白身と黄身がシンクに飛び散っていた。どうやらゆで卵を剥いていたらしい。
「熱っ!!」
抱きついたままの俺を振り払う事もなく、静雄はつぶした卵を茶わんに取り分けた後、水で右手を冷やしていた。
「すまんすまん。何か、静雄の腰がエロかったもんだからよ!」
俺の言葉に、静雄は怪訝そうな顔をしながら振り返った。
「……俺が?」
嘘でしょ?という明らかに半信半疑な響きで言い放つ。
「おう。静雄が」
「………エロいって……」
「エロいぞ?この細い腰も、小さい尻も」
言いつつ、スラックスの上から尻を掴んで揉んでみる。片手に収まるんだから、やっぱり小尻だ。
「うあっ!!」
ただそれだけの事で静雄は声をあげて、背中をしならせた。
「感じやすい、体も」
静雄の反応の良さに、俺の息子も反応する。
すでに自己主張し始めた俺のものを静雄の尻に押し当てると、俺が勃起している事に気が付いたのだろう、静雄が振り返った。
「それは………トムさんが……俺をそういう風にするんすよ………?」
「……知ってっか?お前のそういう…無意識で素直なところも……エロいんだべ?」
顔を引き寄せて、唇を重ねる。ちょっと無理な体勢に、静雄はきつそうだったがそのまま薄く開いた口に舌を差し込んだ。
「……トム、さ……」
途切れる唇の間から、苦しそうに静雄が俺の名前を呼ぶ。
「その、やってる最中だけちょっと上ずって高くなる声も」
すでに潤み始めている瞳も、傷つけないようにって気を遣いながらも、必死でしがみついてくる腕も。
「全部……お前の全てが、俺を煽る」
静雄のベルトを後ろから外す。ブラジャーのホックを外すだけじゃなくて、まさかベルトまで外すのが上手になるとは思わなかったなー…なんて思いながら、
「静雄、俺か卵か、どっち食いたい?」
耳元で囁いてみる。
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