SS 2

□我田引水
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「でな,相談があるんだが」
「……?俺に出来ることっすか?」
「お前にしか出来ないことだ」
「俺に出来るんだったら,何でもしますよ?」
さて。言質は取れた。
「お前のエロ画像,撮らしてくんねえか?」
「……………………は?」
まさに鳩が豆鉄砲!という顔をして,静雄は言った。
「ほら,せっかくのホワイトデーなのに,一緒に居られねえだろ?俺独りの寂しい夜に,お前のエッロい顔が見たくてよ」
「え?え?!エロって,あの,その」
思考回路が至って健全な静雄は,案の定何の事か分かってないらしい。
「別にお前がオナってるのでもいいし,ハメ撮りでもいいべ?」
「ハメって………その,」
静雄の目線が泳ぎつつも俺の下半身に集中する。
「そ。それ♪」
「………誰得すか,それ」
「え?とりあえず,俺は超ハッピーだべ?」
主に俺の下半身がな!!!そう思った自分に,おっさんくせえ……とは思ったものの,ここで引いたら負けだ。
「それにな,恋人のそういう…エロ画像持ってっと,いいことあるらしいぞ!」
そういうヤツは自分一人じゃない,という『一般化』は,静雄の感覚を麻痺させるはずだ。まあこの場合誰かが言った訳じゃなくて,そういうことをしてるカップルはたくさんいるだろ?ということを踏まえた上での憶測に過ぎないが。
「いいことって………」
「とりあえず,俺の血行と体調は確実に良くなるな」
「トムさん,元気になるんすか?」
「おう。超元気になるべ」
俺の必殺のキメ顔でウインクをかます。
「…………トムさんが,そう言うなら…………」
決してノリノリでは無い。が,静雄は俺のおねだりに弱い。
「マジで?!」
はしゃぐ心を抑えつけ……きれてないけどな。
でもここであまりテンションを上げすぎると「やっぱ無し」とか言い出しそうだ。
「ただ……」
「……どうした?」
「それ……トムさんだけすよね?」
困ったようにぼそぼそと言う。
「俺だけって?」
「トムさんだけしか見ないなら,別に……俺は何されても……」
YES!!!出来た嫁!!!恥らって,嫌がって……でも俺の為なら,って!!!
ノリノリで「いいっすよー」って言うんじゃなくて,俺だけの特別感が,俺を満たす。心の中で全力ガッツポーズ。
「そんなの,俺以外に見せる訳ねえべ,勿体ねえ」
「勿体ねえって,そんな」
苦笑いしつつも,静雄は何処か嬉しそうにはにかんだ。
「で,静雄,どうする?」
「どうするって,何すか?」
「カメラ越しに俺を誘うか,俺にハメ撮りされるか,どっちがいい?」
「どっちが…って……俺が選ぶんすか……?」
どっちかって言われたら,おそらくどっちも嫌なんだろうが,静雄は俺の手前,一度OKした事は覆さない。逆に言うなら,そのために俺は小芝居をうって,言質をとったんだ。
「別に,俺はどっちでもいいからな」
むしろ,どっちも!というのが一番のベストだ。
そうでないなら,独りで俺を誘わせた上で,覆い被さるってのがいいだろう。そんな内心なんか一切匂わせず,さらっと言うと,
「じゃあ,俺も別にどっちでも……」
静雄はまた罠にかかった。
「そう?!だったら,静雄!自分で俺のこと考えて,ヤってみてくんね?」
下半身をシコシコするような手つきをしてみせると,静雄は驚いた顔で言った。
「え?!今からっすか?!……まだ風呂も入ってねえのに」
「だって風呂に入っちまったら,お前スウェットに着替えるじゃん」
「それって普通じゃないすか……?」
パジャマのトレーナーじゃセクシーも半減するってもんだろ?
「ダメだろ?やっぱお前はバーテン服じゃなきゃ!」
いつもの静雄だからこそ,エロいんだって!!!
「そんなもんすか……?」
「考えてみろよ,トレーナー着てるAV女優,見たことあるか?」
開いたシャツの間からちらりと覗く素肌がエロいと思う。逆にトレーナーを捲り上げてガバッと腹を出されてもあまりそそられない。
「そもそもAV観ないっす」
「……そうだったな」
静雄に対して愚問過ぎる同意を求めた自分に,はしゃぎすぎてたな……と反省する。
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