小説

□甘い香
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最近…家に帰ると、ヤツは不機嫌そうに俺を見る。


毎日という訳では無いが……1週間に1回であったり、2日に1回であったり、それは唐突に起こるらしい。

何を言うでも無く、ガキみたいに唇を尖らせて俺を一瞥すると、また自分の世界に戻る。


何が気に食わんのか…。
はっきり言えば良いものを。


ヤツは、割と天気屋で喜怒哀楽が表に出る性格だが、他人に八つ当りをするという事が滅多に無い。

自分の機嫌は、自分の中で終わらせるタイプらしいからな。


しかし、そんなヤツが、わざわざ俺を目の敵みたいに見るのだから、ここ数日の不機嫌の元凶は、俺にあるという事か?


心当たりは…無いが。



それに、飯の支度をする頃には、その機嫌も直っているのだから、特に気にする必要はないのだろう。



多分な。



ヤツの事だ。
そのうち色々と注文を付けてくるに違いない。

下手に俺から聞いた所で、更に機嫌を悪くされないとも限らんからな。



惚れた弱味…か。
下らん。

だがそれも事実という事か。
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