□虹の彼方□

□照れ屋な彼
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私にはしっかり者で頼りになる幼馴染がいる。

家が隣同士で、小さいころからずっと一緒に育ってきた幼馴染。




「梓―!教科書忘れちゃったから貸して?」



高校生になった今でも、私は彼に頼りっぱなしだ。



「………」

「あーずーさー」



いつまでも返事をしない彼に、私はもう一度大きな声で呼びかけた。


すると彼は、大きなため息をついて私に近づいてきた。



「…お前なあ」

「どしたの、そんな怖い顔して?」



満面の笑みで答える私に、彼は再びため息をつきながらこう叫んだ。



「名前で呼ぶなって何度も言ってんだろ!」

「いいじゃん、素敵な名前なんだし♪」

「よくねーよ!こんな女みたいな名前…」



そして彼はいつものようにぶつくさと文句を言い出してしまった。


昔から名前で呼ばれることを嫌がっていたけれど、高校生になってからはそれをさらに嫌がるようになった。




「私は好きだけどなぁ…。」

「はぁ…?」

「梓の名前!それに、名前って親がくれる最初の愛情だよ?もっと大切にしなきゃ。」

「それはそうかもしれねぇけど…」




そう言って彼は少し考え込んでしまった。

口ではなんだかんだ言ってても、本当はとても優しい彼。

私の言ったことを紳士に受け止めてくれてるんだよね?


そんな梓の顔を覗き込みながら、私は彼に質問した。



「梓はさ…私が梓の名前を呼ぶのがそんなに嫌?」

「なっ…んなこと……」



顔を赤くしてそう言う梓が可愛くて、ついつい私の口元は緩んでしまう。



「…なんだよ。」

「なんでもなーい。」






幼馴染という私たちの関係が変わるのは、きっとそう遠くはない未来のこと。






―照れ屋な彼―
(俺のこと名前で呼んでいいのは、お前だけだからな)




2008.2.23

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