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□三つの悩み
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坂田銀八は銀魂高校の現代国語の教諭だ。
現在は3年z組の担任という、甚だ不本意な修飾語が付く。
本当はそんなしち面倒なこと引き受ける気はなかったのだが、受け持ち予定の生徒名簿を見て途端にその態度を変えた。
出席番号11番。そこに煌々たる名を見つけたのだ。
土方十四郎。
実は教師にあるまじく、銀八は入学式で新入生代表の挨拶をした彼に一目惚れし、そこからはストーカーも
かくやという行動の果てに、ようやく彼をgetするに至ったという経緯を持つ。
そのようやく手に入れて、目に入れても痛くない恋人の担任なのである。断るはずがなかった。
もしかすると、押し付けてきた理事長である寺田綾乃は、このことを知っていたのかもしれない。
しかし担任になれれば、ただの担当教諭に比べて土方に接する時間が長くなるのは確実だ。
乗せられた、と思わないでもなかったが、ここは一つ乗せられておくべきだというのが銀八の出した答えだ。
思惑通り担任であることを利用して土方になんやかんや用事を言いつけ、自分の教務室に呼び出してはあんなことやこんなことができる日々が続き、銀八は幸せを噛み締めていた。
しかし、そんな薔薇色の日々はそうは長く続かなかったのだ。
目下、銀八を悩ましているのは三つの悩み。




「何でお前がいるの?」

例の如く、放課後土方を呼び出した銀八は、憮然とした面持ちでそう尋ねた。
目の前には可愛くて可愛くて、そろそろマジで食っちゃおうかな(あっちではなく、本当に砂糖をふりかけ
食するつもりだ)と思案している恋人に寄り添うように、一人の目付きの悪い男が立っている。
その男は片眼に眼帯をはめ、不敵に笑みを浮かべていた。
高杉晋助。
やはり銀八の受け持ちクラスの一人である。
いつも一人でいるのを好むこの男は醸し出す雰囲気のせいか、他の生徒達からは敬遠されているようなのだが、何故か土方にだけは懐いていた。
これが銀八の悩みの種の一つ目だ。
高杉は銀八と土方との仲を知っているかのように、最近事あるごとに邪魔を仕掛けてくる。
いや。絶対に気付いている、と銀八は踏んでいた。
そして、高杉が土方をどう想っているのか。それも銀八は分かっている。
わかっていないのは、当の土方のみだ。
土方は本当にこういったことには、鈍い。呆れるほどに鈍い。
だからいつだって銀八は心配で堪らないのだ。

「今から一緒にテスト勉強すんだよ。用事があるなら、早く言えやぁ」

来週明けから定期テストだ。
この普段勉強なんぞ歯牙にもかけていない高杉が、こんなことを言い出すなんて理由は一つしかない。

「ダ、ダメダメ!!そんな危ないこと、先生許しません!!!」
「危ないこと・・・?」

突然立ち上げり顔色を変えて猛然と反対する銀八に、土方はコトンと首を傾げる。
土方からすればテスト勉強で何が危ないのか、といったところなのだろうが、高杉が土方と二人っきりで、
勉強だけで終わるわけはないということなど、銀八にはお見通しだ。

「おいおい、銀っぱっつぁんよぉ。生徒が勉強するって言ってんのに、そりゃぁねぇだろ」

白々しく肩を竦めてそう言い放つ高杉の顔には、勝ち誇ったような笑みが浮かんでいて、余計銀八の癪に障る。
だからつい叫んでしまったのだ。

「勉強ならここで俺が見てあげるから!!そこに座れ!!!」

有無を言わせず、来客用においてある簡易ソファーセットに二人を座らせ、自分の担当外の勉強にまで付き
合う羽目に陥った銀八は、ちょっぴり自分の浅はかさを恨んだ。




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